京都市は財源確保に向け、市が保有する土地や建物の有効活用を図る「資産有効活用基本方針」をまとめた。公共性、公益性を重視した活用が見込めない場合、積極的に売却を進める方針を示し、市民や事業者から活用案を募る制度も創設する。
 基本方針は「資産の未利用は結果的に市民に負担をかける」として民間への売却を積極的に進め、今後4年間の予算編成に際し年間50億円をひねり出す。このため、各局が個別に所管する未利用地の活用方法を検討してきた仕組みを見直す。全市的な観点で検討するため、行財政局が土地情報を集約し、一定規模以上の資産の活用を決定する「資産活用推進会議」も庁内に設置する。未利用地の現況や活用に向けた課題を把握する総点検も来年度まで実施する。
 また、市有財産の有効活用に市民や事業者のアイデアを生かすため、対象資産や応募期間を設けず事業計画を募る提案制度も11日にスタートさせた。提案内容は、市が事業性や財政効果などを踏まえて審査する。少子化に伴う統廃合で市中心部に生じた20校の学校跡地についても、民間事業者や団体などから10年以上の長期活用策を募るほか、市の施設やイベントのネーミングライツ命名権)導入に向けた提案も受け付ける。

本記事では,京都市における「資産有効活用基本方針」の策定を紹介.同基本方針に関しては,同市HPを参照*1
2008年度から2011年度までに同市では「合計202件,約125億円の売却実績」と2009年度からの「公募による行政財産の目的外使用許可等」により,2009年度は「約4,700万円」,2010年度は「約4,400万円」,2011年度は「約2,500万円の増収」*2実績がある同市.一方で,資産の更なる有効活用という観点からは,現在は「資産の所管局等が主体となり,それぞれ資産活用の検討を進めている状況」にあること,そして「財産統括部署」でも「資産の現況及び今後の利用予定等の情報を一元的・網羅的に集約できていない」状況にあるため,「活用の検討への関与の度合いが薄く,全市的な観点に基づく検討を進めるうえで課題」*3と認識..そして,同基本方針のもとで,まずは「財産統括部署の果たす役割」の明確化が図られており,具体的には次の8項目とされている.

<資産有効活用に向けた財産統括部署の果たす役割>
①資産の管理事務の統括(目的外使用許可,貸付,売却等の指導等)
②資産の利用状況の調査,有効活用可能資産の抽出
③資産の有効活用促進策の企画立案
④資産の活用計画及び処分方針の調整
⑤資産の有効活用に向けた各局等への支援
⑥財産処分事務
⑦各局等が有する庁内外の資産及び資産需要の収集
⑧資産の活用に関する相談対応や提案受付

加えて,「土地情報関連部署等による庁内ネットワークを構築」した「共通様式を用いた連絡制度の導入」,「公有財産管理システム・イントラネット等を活用」による「情報の一元化,発信,共有」*4や,「一定規模以上の資産等の情報を一元化し,多角的な観点から資産の利用・処分等」の「審議等を行うため」に「局長級で構成する「資産活用推進会議」を設置」*5の方針という.
同基本方針では,「資産が持つ潜在能力や価値を引き出さずにおいておく」ことは,「損失を生み出していることと実質的に同じ」として,「機会損失」の「発生」により「結果として市民に負担をかける」*6という,いわば「不作為のコスト」*7からの提案.今後,同市が保有されている資産を,上記の組織体制のもとで,「従来どおり継続して利用する資産(継続利用資産)」,「従来の利用形態に用途追加又は転用し,利用する資産(用途追加・転用資産)」,「当面利用しないが,将来の需要などに備えて保有する資産(継続保有資産)」,「保有する必要がない,又は売却することが望ましいとした資産(売却資産)」*8の4分類に区分される模様.今後の区分結果も要観察.

*1:京都市HP(市の組織行財政局各課の窓口財産活用促進課財産有効活用係)「「京都市資産有効活用基本方針」の策定及び資産の有効活用における「市民等提案制度」の創設について

*2:前掲注1・京都市京都市資産有効活用基本方針」の策定及び資産の有効活用における「市民等提案制度」の創設について)2頁

*3:前掲注1・京都市京都市資産有効活用基本方針」の策定及び資産の有効活用における「市民等提案制度」の創設について)3頁

*4:前掲注1・京都市京都市資産有効活用基本方針」の策定及び資産の有効活用における「市民等提案制度」の創設について)7頁

*5:前掲注1・京都市京都市資産有効活用基本方針」の策定及び資産の有効活用における「市民等提案制度」の創設について)8頁

*6:前掲注1・京都市京都市資産有効活用基本方針」の策定及び資産の有効活用における「市民等提案制度」の創設について)5頁

*7:佐藤主光『地方財政論入門』(新世社,2009年)92頁

地方財政論入門 (経済学叢書Introductory)

地方財政論入門 (経済学叢書Introductory)

*8:前掲注1・京都市京都市資産有効活用基本方針」の策定及び資産の有効活用における「市民等提案制度」の創設について)8頁