県は、 公文書の開示に関する 「県情報公開条例」 の改正を目指している。 開示請求者に文書閲覧の費用負担を新たに求める他、 経済事情などに応じた負担の減免なども行う内容で、 県情報公開制度懇話会(会長=森口佳樹和歌山大学教授、 委員5人)がまとめた提言に基づき、 9月県議会に条例改正案を提出する見通し。
 県総務学事課によると、 県の情報公開制度は平成5年にスタートし、 13年10月に現行条例を施行。 開示請求件数は14年度が1590件、 23年度は1万2787件に達した。請求の増加に伴う行政コストの増大に加え、 請求者が開示決定後も閲覧せず、 文書が未処理のままとなるなどの不適正な請求もあり、 コスト負担の不公平が顕在化しているとして、 6月から今月までに同懇話会を4回開き、 制度の見直しを検討してきた。
 同懇話会の提言では、 請求者に対し、 現行の文書の 「写しの交付」 に要する費用に加えて 「閲覧」 についても負担を求めるとしている。 この点は、 検討途中で行ったパブリックコメントで県民から反対意見が寄せられたが、 県は、 1回の請求当たり約1万1700円かかっているとし、 コストに大きな差がない 「写しの交付」 と 「閲覧」 の負担の不公平を是正するためにも、 費用負担は適当との認識を示した。費用負担について提言ではさらに、 経済的困難などの理由がある人の負担の減免、 開示請求が著しく大量の場合に費用の見込み額を事前に納付することも盛り込んでいる。不適正な請求の対策では、 開示決定後も請求者が一定期間、 閲覧や交付に応じなければ、 開示したものとする 「みなし開示」 を導入すべきとしている。

本記事では,和歌山県における情報公開条例の改正方針を紹介.
同県では,情報公開制度の「開示にかかるコストの適正な負担のあり方や適正さを欠く開示請求への対応という課題が顕在化」されてきたとの認識から,本記事内で紹介されている「情報公開制度懇話会」を,2012年6月に第1回を開催.同懇談会では「手数料の徴収」「適正でない開示請求への対応」*1を議題に審議が行われ,第2回では「 手数料の徴収」と「見なし開示の導入」「大量請求の場合に一定の手数料を予納すること」*2が検討.第3回では「情報公開事務に係る事務のコスト計算等」*3が行われている.そして,第4回では次のような提言をまとめられている.
まず,「費用負担」では,現行制度における費用負担は,「写しの交付」に要する費用のみ」であったところ,「閲覧」についても費用を負担してもらうことが適当」との方針であることである.二つめは「費用負担の減免」である.「経済的困難その他特別の理由があると判断した者」に対しては「費用負担の減免を行うことが適当である」ことである.三つめは「みなし開示」の導入である.これは「開示請求者が正当な理由なく開示に応じない場合」には「一定期間経過後,開示したものとみなし,その手続きを終了することが適当である」こと.四つめは,「大量請求の場合の予納」である.「開示請求に係る公文書が著しく大量である場合」に「一定の公文書の開示決定の前にその部分の開示に係る費用負担の見込額を予納しなければならないものとすることが適当である」こと.最後の五つめは「他の制度との調整」である.「建築基準法に基づく建築計画概要書の閲覧のように,法令で「閲覧」の方法による開示のみが定められており,「写しの交付」の規定がない」ことから,「情報公開の手続により継続的に「写しの交付」を行っている事例」があり,これらに対しては「当該関係規程等に「写しの交付」及び当該「写しの交付」に係る費用を徴収する規定を設けることが適当である」*4ことである.同県HPから把握できる,同懇談会の審議結果及び条例改正方針は,現在のところ,上記のとおり.
「活動する市民」*5にとっては,「閲覧」分の費用負担の追加とはなりそう.一方,請求者の「経済的困難その他特別の理由」次第では,「費用負担の減免」も設けるともあり,同制度の利用の裾野を拡げることにもなる.ただ,「経済的困難」はどのように把握されるのだろうか.要確認.また,同県の条例改正では,請求すれども閲覧しない,不活動な市民にとっては「大量請求の場合」には,「予納」制度を設けて請求者が費用負担することで,開示を放置しないことをさせないともある.このように,「誘因政策」*6も盛り込まれている同条例の改正方針.「経済的困難その他特別の理由」の把握と判定手続,または,「大量請求」とされる場合の判定基準などのより詳細な方針は,公表後,要確認.