閉鎖や老朽化で放置された沿道のパチンコ店やドライブイン、空き家などが景観を損ねているとして、兵庫県は、指定区域で行政代執行ができるよう、景観条例を改正する方針を固めた。複数の市町にまたがる景観を指定する「広域景観形成地域」も新設。来年2月の定例県議会に改正案を提案し、10月の施行を目指す。
 県は1985年、全国に先駆けて景観条例を施行。魅力的な街並みなどを「景観形成地区」、良好な田園風景などを「風景形成地域」に指定し、建築物の新改築で届け出を義務付けた。
 近年、自治体の取り組みが進み、県内10市が景観法に基づく景観行政団体に移行し、5市が独自条例を制定した。一方で、放置された沿道の施設が増えるなど新たな課題も浮上。このため、県は条例の見直しを始め、諮問した審議会がこのほど答申案をまとめた。それによると、現行条例上、複数市町にまたがる景観は風景形成地域に指定してきたが、景観行政団体などの市域は除外しており、連携の仕掛けが必要と指摘。広域景観形成地域を設け、県と市町による協議会で地域指定を行うとした。これには現在、風景形成地域に指定している但馬海岸や円山川下流地域などが考えられるという。また、景観形成地区と広域景観形成地域内で、適切な管理が行われていない放置施設などには、立ち入り調査や所有者への要請、勧告を経て、命令・公表する。改正案に罰則規定は盛り込まないが、命令に従わない場合、所有者に代わり取り壊す行政代執行をする可能性もある。県は放置施設などを調査しており、対象規模や場所、老朽化の程度などの基準を設ける。答申案は県のホームページなどで閲覧でき、県民の意見を募集している。

本記事では,兵庫県における景観条例改正方針を紹介.
同県では,2012年3月23日に,同県に設置されている景観審議会に対して,「これからの兵庫の景観形成制度のあり方について」に関して諮問.同諮問事項を拝読させて頂くと,「景観法」では「都道府県と市町との二重行政を避ける」ことを目的に「一つの行政区域についてはそのいずれかが一元的に景観行政を担う」こととされているものの,「広域の景観軸となりうる幹線道路や主要河川等が複数市町に跨る場合」がある現状が明記.これを受けて,同審議会に対して,「広域的な景観形成については県がその役割を担うべきと考え」があるとして,具体的には「景観行政団体である市」が「それぞれの市域を対象とする景観計画を策定している中」で,同県でも,「県土全域や県民局よりやや広い範囲を対象」とした「県土の景観形成のあり方やマスタープランを検討すべき」としている.また,県全域から「景観行政団体である市の区域を除く区域を対象とした、県の景観計画の策定」に関しても「併せて検討」*1することも諮問されている.同審議会の「平成24年度」*2の審議状況は,現在のところ,同県HPでは公表されてはいないため,同諮問事項の審議結果が把握できないものの,本記事を拝読させて頂くと,同諮問を受けて取りまとめられる答申案では「広域景観形成地域」を設置される方針の模様.
「景観法の施行により,「やりやすくなった」ところ」*3もあるとも解される一方で,「景観行政団体としての市区町村」,「非景観行政団体としての市区町村」,「未景観行政団体としての市区町村」が存在する「景観行政団体としての都道府県」*4の観点からは,「すべてがそうというわけではない」*5ということにもなるのだろうか.同答申案の提出後,条例改正により整備される「広域景観形成地域」内での,「景観行政団体としての都道府県」,「景観行政団体としての市区町村」,「非景観行政団体としての市区町村」,「未景観行政団体としての市区町村」の四者間での協議と調整の実施過程は,要観察.

*1:兵庫県HP( まちづくり・防災まちづくり景観形成景観審議会資料)「諮問第354号 これからの兵庫の景観形成制度のあり方について(諮問)」1頁

*2:兵庫県HP( まちづくり・防災まちづくり景観形成)「景観審議会資料

*3:北村喜宣『自治力の爽風』(慈学社,2012年)111頁

自治力の爽風―分権推進型政策法務の実践 (慈学社政策法学ライブラリィ)

自治力の爽風―分権推進型政策法務の実践 (慈学社政策法学ライブラリィ)

*4:松井望「景観行政における自治体間協議と広域的連携」『『景観形成とまちづくり』の都市政策分析報告書』(都市教養学部 都市政策コース,2008年3月)44頁

*5:前掲注3・北村喜宣2012年:111頁