県議会9月定例会は12日、本会議を再開。滝沢村が2014年1月に「滝沢市」への移行を目指す上で障害となっていた県条例の市制要件を緩和する改正案を全会一致で可決した。これで障害はなくなり、市制移行へ大きく前進した。村は村議会12月定例会で市制移行を議決する。
 同村の市制移行をめぐっては、「都市的施設その他の都市としての要件に関する条例」にある「官公署が5以上」の要件が満たされていないことが最大の障害で、改正条例では同要件は削除された。ほかに「上下水道やバスなどの事業を1以上経営」など4要件も削除・一部削除された。可決後、県庁で記者会見した柳村典秀村長は「全会一致は大変な応援の表れで、重みを感じている。市制へ向かう準備に弾みがついた」と述べた。

本記事では,岩手県における「地方自治法第8条第1項第4号の規定による都市的施設その他の都市としての要件に関する条例」改正の取組を紹介.同条例改正に伴い,2011年1月19日付の本備忘録にて記録した同県に位置する滝沢村の市制移行へは「障害はなくなり」「前進」したという.
前職で教えて頂き*1,現在もまた,下名のなかで上手く理解ができない地方自治法上の制度一つが,地方自治法第8条第1項の市への移行要件.同規定では概括的に市の要件を定めている.一方,同法同条同項第4号では「当該都道府県の条例で定める都市的施設その他の都市としての要件を具えていること」と置き,移行要件の詳細は,都道府県条例へと委任されている.そのため,市の「設立」には,同市に移行を希望する町村が位置する都道府県の条例に基づくことになる.これにより規定される要件が綿密であればある程,「単一制」を採用する日本においても「連邦制を採用するアメリカ」*2ではないものの,いわば事実上,市は恰も都道府県の「創造物」のようであるとして,下名が担当させて頂いてる講義内でも,毎回悩みつつお話しする同条例.
同県が制定されている「地方自治法第8条第1項第4号の規定による都市的施設その他の都市としての要件に関する条例」*3では,以下の規定を置いている.

  • 1 地方事務所,税務署,公共職業安定所等の官公署が,5以上設けられていること.
  • 2 学校教育法に規定する高等学校が設けられていること.
  • 3 公私立の図書館,博物館、公会堂又は公園等の文化施設を,2以上有すること.
  • 4 上水道,下水道,軌道又はバス事業等の事業を,当該普通地方公共団体において1以上経営していること.
  • 5 当該普通地方公共団体の住民1人当りの国税又は地方税の納税額が,県の区域内における他の市の住民1人当りの国税又は地方税の納税額と比して,概ね遜色がないこと.
  • 6 当該普通地方公共団体の前年度予算総額を全人口で除した額が,県の区域内における他の市の前年度予算総額をその市の全人口で除した額と比して,概ね遜色がないこと.
  • 7 銀行,会社,工場,事業場等の数及びその規模が,他の市に比して概ね遜色がないこと.
  • 8 商工業その他の都市的業態又は都市的業態に従事する者及びその者と同一世帯に属する者の数が,最近5箇年間増加の傾向にあること.
  • 9 病院,診療所,劇場,映画館等の施設が,相当数設けられていること.

同規定を分類すると,当該町村が自律的に整備ができる要件(第3項,第4項)もある(第7項,第8項,第9項も,自律的な整備もできなくもないかなあ).他方で,当該町村以外の他律的な要件もある.例えば,県側による整備が必要となる要件(第1項,第2項),社会経済状況に基づく要件(第5項,第6項,第7項,第8項,第9項)とに分けることも可能である.本記事を拝読させて頂くと,第1項,第4項と県側による整備が必要となる要件が「削除・一部削除」された模様.加えて,他の「削除・一部削除」された2項は,どの項目だろう.「県報」*4の発行後,要確認.

*1:池田泰久「都市の人口要件に関する整理−地方自治法以前−」『都市とガバナンス』第04号,2003年3月

*2:礒崎初仁・金井利之・伊藤正次『改訂版 ホーンブック地方自治』(北樹出版,2011年)81頁

ホーンブック 地方自治

ホーンブック 地方自治

*3:岩手県HP(岩手県の法令・制度岩手県法規集)「地方自治法第8条第1項第4号の規定による都市的施設その他の都市としての要件に関する条例」(昭和23年3月8日条例第7号)

*4:岩手県HP(岩手県の法令・制度)「岩手県報