福山市は来年4月から、弁護士の常勤職員を初めて採用する。中国地方の自治体では珍しい試み。国や広島県からの権限移譲で市が条例の制定・改正や政策立案を担うようになった中、法的妥当性のチェック機能を高めるためという。
 2016年3月末までの3年間の期限付きで若干名を採用する。11月1〜15日に採用試験申し込みを受け付ける。給与は経験や職責に応じ、月額37万5千〜84万4千円。市は3年間で効果を検証し、その後も採用を続けるかどうかを決める。市施策の日常的な法令チェックは現在、総務部の法学部出身の職員が担当。近年は各部局からの相談が増え、内容も複雑になっているという。市は常勤弁護士に迅速で専門性の高い検証・助言や、訴訟を担当する顧問弁護士への橋渡し役を期待する。
 日本弁護士連合会によると、地方自治体の弁護士資格保有者の常勤職員は現在23自治体に計38人いる。中国地方では岡山市の1人。法令チェックのほか、教育現場で理不尽な要求をする保護者への対応なども期待され、年々増えているという。福山市人事研修課は「法令順守の徹底を図り、人件費を上回るメリットを市民に感じてもらえるようにしたい」としている。同課=電話084(928)1009。

本記事では,福山市における組織内弁護士の配置の取組を紹介.
2010年2月26日付の本備忘録瀬戸内市同年7月1日付の本備忘録の神奈川県,同年9月4日付の本備忘録流山市2011年2月16日付及び同年3月31日付の両本備忘録の福岡市,同年11月3日付の本備忘録池田市同年12月1日付の本備忘録栃木市和歌山市同年12月21日付の本備忘録明石市2012年1月31日付の本備忘録の千葉県と,本備忘録でも記録して来た同取組.同市の同取組の詳細は,同市HPを参照*1
「2013年(平成25年)4月1日 から2016年(平成28年)3月31日 までの3年間」*2の「特定任期付職員」として採用される同職.「弁護士名簿に登録をしている人」,「弁護士となる資格を有する人」,「2013年(平成25年)3月31日までに司法修習生の修習を終える見込みの人」であることを募集の「資格・免許等」となり,「個人面接による口述試験」による選考が実施.
採用後は,「市長部局,教育委員会上下水道局等」で「訴訟関係,行政不服審査その他法的事案の整理・処理業務」,「施策の法的妥当性,法令への適合性の検証,助言」,「職員からの法令解釈等の法務相談など」*3を担当する.その給与は,「弁護士としての実務経験やその職責等に応じて任命権者が号給を決定」され,1号級であれば375,000円.2号級の場合には424,000円,3号級は477,000円,4号級は541,000円,5号級は617,000円,6号級は721,000円,7号級は844,000円
が「給与月額」となり「このほか,通勤手当,期末手当等の諸手当をそれぞれの条件によって支給」*4される.
「実際の行政においては,通達・通知は極めて協力な行為規範だったなか」「今や通達・通知に従わなくてもよくなった」ものの「自治体の現場職員全てが十分な法務知識を修得する余裕はない」とすれば,「通達・通知を読み込んだ上で,なおそれに従わないやり方があるのではないかと知恵を出す人,刺激を与える人が必要」*5とも解される.また,「任期付職員として弁護士を採用する場合」には,「自治体の職員から相談を受けたとき,訴訟による解決を図ることまで」の「将来展開」を「予想」するためには採用される弁護士には「最低でも2年程度はほしいところ」*6との見解もある.知恵と刺激を与え,将来展開の予測も可能となる同職への募集結果は,要確認.

*1:福山市HP(担当部署でさがす人事研修課2012年度(平成24年度)福山市職員採用候補者試験(10月26日公告分))「2012年度(平成24年度)福山市任期付職員採用候補者試験案内(20122年(平成24年)10月26日)【募集職種】 弁護士 診療情報管理事務

*2:前掲注1・福山市(2012年度(平成24年度)福山市任期付職員採用候補者試験案内(2012年(平成24年)10月26日)【募集職種】 弁護士 診療情報管理事務)2頁

*3:前掲注1・福山市(2012年度(平成24年度)福山市任期付職員採用候補者試験案内(20122年(平成24年)10月26日)【募集職種】 弁護士 診療情報管理事務)1頁

*4:前掲注1・福山市(2012年度(平成24年度)福山市任期付職員採用候補者試験案内(20122年(平成24年)10月26日)【募集職種】 弁護士 診療情報管理事務)5頁

*5:西尾勝地方分権改革の道筋と自治体法務」日本弁護士連合会地方自治のあり方と弁護士の役割に関する検討ワーキンググループ『自治体と弁護士の連携術』(ぎょうせい,2012年)16頁

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*6:伊東健次「自治体を元気にするために弁護士に何ができるのか」所収・前掲注5:16頁