東日本大震災の復旧工事に対応するため、任期付き都道府県・政令市OBを募集した岩手県は20日、応募が45人と採用予定の70人を大きく割り込んだことを明らかにした。公共工事の削減でもともと全国的に技術職員が少なくなっている上に、震災後に被災地の需要が急増しており、人材不足が深刻になっている。
 募集した6職種の応募倍率は、漁港工事を担当する「総合土木」の2.3倍を除き、全て定員に満たなかった。電気設備の設計・発注などを担う「電気」が最も低く、0.3倍だった。県は豊富な行政経験やマネジメント能力を復興に活用しようと、10月17日から今月14日まで全国公募。中堅職員級と同等の月収約40万円とボーナスなどの好待遇を用意していた。
 県は11月現在、他県からの応援や任期付き職員採用も含め、昨年4月比で約220人を増強している。しかし、復旧工事発注がピークを迎えるのは来年度。さらに160人が必要と見込み、このうち4割以上を行政OBで賄う計画だった。県人事課は「このままでは絶対的に職員が足りなくなる」と話すが、2次募集するかどうかは未定という。

本記事では,岩手県における職員採用の取組を紹介.
「災害復旧工事等を着実に進めていく」ことを目的に,「任期付職員」として「都道府県等職務経験者」を対象として,2012年10月17日から11月14日までの間で募集をされてきた同県.同年11月21日に「1次審査」は書類審査を実施.次いで2次審査として「人物考査(個別面接)」を11月28日から12月14日に行い,最終発表12月27日に予定されている.募集された職種は,下記の通り*1.本記事では,各職種への応募状況を紹介.

職種 役職 採用予定人員 予定勤務先
一般行政 主査又は主任主査 20人 出先機関(広域振興局等)又は本庁(岩手県収用委員会事務局含む)
総合土木1 課 長 3人 出先機関(沿岸広域振興局水産部、宮古水産振興センター又は大船渡水産振興センター)
総合土木2 主査又は主任主査 20人 出先機関(広域振興局等)又は本庁
建築 主査 主任主査又は出先機関の課長 15人(うち課長1人) 出先機関(広域振興局等)又は本庁
電気 主査又は主任主査 6人 出先機関(広域振興局等)又は本庁
機械 主査又は主任主査 6人 出先機関(広域振興局等)又は本庁

各役職は「課長」は「部下を指揮し,出先機関の課の事務を統括する」こと,「主任主査」は「部下を指揮し,出先機関又は本庁の課等の特定事務を処理するとともに,その事務を統括する」こと,「主査」は「部下を指揮し,出先機関又は本庁の課等の特定事務を処理する」ことになる.このように,各募集対象ともに「部下を指揮」するか「事務を統括」する業務を求められる.ただし,これらの業務を担当されるものの,いずれの役職も「採用予定の役職はすべて非管理職」となり,「 給料の特別調整額(管理職手当)は支給され」ない.各役職への給料は月額で,課長は「403,200円程度(上限額)」,主任主査は,その職務経歴年数に応じて30年の場合には「388,700円程度」,38年の場合には「403,200円程度(上限額)」,主査もまた庶務経歴年数に応じて,30年の場合には「376,800円程度」,38年の場合には「388,300円程度(上限額)」*2と規定されている.
そのため,一口で「都道府県等職務経験者」と述べても,各職の募集要件として,任期3年間の採用初年度となる2013年4月1日現在の「年齢が63歳未満の者」であることに加えて,「退職(予定)時の職種」と「職務経験職務の級」*3を予め求めている.

職種 退職(予定)時の職種 職務経験職務の級
一般行政 次の業務に従事した経験が通算5年以上の者.公共事業の執行に伴う土地等の取得・補償,土地収用等の用地業務 国家公務員行政職 俸給表(一)4級相 当以上
総合土木1 次の業務に従事した経験が通算10年以上の者であって,過去 5年以内に,次の業務を担当する部下職員を指揮監督する業務に従事した経験がある者 ・公共土木施設に関する設計・積算、発注、工事監督等の業務 国家公務員行政職 俸給表(一)5級相 当以上
総合土木2 次の業務に従事した経験が通算10年以上の者であって,過去 5年以内に次のいずれか又は両方の業務に従事した経験がある者.公共土木施設に関する設計・積算,発注,工事監督等の業務 ・土地区画整理事業,街路事業,開発許可等の都市計画関連業務 国家公務員行政職 俸給表(一)4級相 当以上
建築 建築基準適合判定資格を有し,かつ次の業務に従事した経験が通算10年以上の者であって,過去5年以内に次のいずれか又は両方の業務に従事した経験がある者.建築確認業務 公共建築物に関する設計・積算,発注,工事監督等の業務 国家公務員行政職 俸給表(一)4級相 当以上
電気 次の業務に従事した経験が通算10年以上の者であって,過去 5年以内に次の業務に従事した経験がある者.公共土木施設又は公共建築物の電気設備に関する設計・積算,発注,工事監督等の業務 国家公務員行政職 俸給表(一)4級相 当以上
機械 次の業務に従事した経験が通算10年以上の者であって,過去 5年以内に次の業務に従事した経験がある者.公共土木施設又は公共建築物の機械設備に関する設計・積算,発注,工事監督等の業務 国家公務員行政職 俸給表(一)4級相 当以上

本記事では,「「総合土木」の2.3倍を除き,全て定員に満たなかった」ことを紹介.都道府県等職務経験者のうち,期待される業務の要件を満たす人材が既に枯渇しているのか,または,復興支援には加わりたいという希望があるものの要件を満たさず応募を満たさず応募を控えたのか,更には,要件も満たし,支援業務への意欲はあるものの,他の自治体での「昇任メリット」*4を感じないことからの昇任(試験)回避の若手職員の職員行動と同様に,「都道府県等職務経験」後に再び「部下を指揮」するか「事務を統括」業務への忌避感から応募を留まることなったのか.その要因は要確認.

*1:岩手県HP(採用・資格職員採用試験県職員岩手県任期付職員(都道府県等職務経験者)採用選考のご案内)「岩手県任期付職員(都道府県等職務経験者)採用案内」(岩手県総務部人事課 平成24年10月)1頁

*2:前掲注1・岩手県岩手県任期付職員(都道府県等職務経験者)採用案内)3頁

*3:前掲注1・岩手県岩手県任期付職員(都道府県等職務経験者)採用案内)2頁

*4:稲継裕昭『地方自治入門』(有斐閣,2011年)103頁

地方自治入門 (有斐閣コンパクト)

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