鳥取県議に議員報酬とは別に調査研究活動の経費として交付される「政務調査費」(年間上限300万円)の支出について「県民に理解が得られにくい事例がある」として、県監査委員(岡本康宏代表監査委員)は28日、伊藤美都夫県議会議長に改善を申し入れた。議員の親族とみられる人物を政務調査費で補助職員として雇用した例や、職員の勤務実態が不明確なケースなどがあった。
 いずれも法令違反などはないが、岡本代表監査委員は「基準を明確化し透明性を確保する必要がある」としている。監査委員が昨年度の決算定期監査で各議員の収支報告書を調査。「不適切」とされる支出はなかったが、6項目で改善すべき部分が見つかった。政務調査費で同居親族とみられる人物を雇用していた議員は1人。県議会が定めたガイドラインでは、配偶者への人件費は認めていないが、親族についてはあいまいなまま。全国都道府県議会議長会は昨年10月に「親族の雇用は誤解を招きやすいので適当でない」との考え方を示しており、県監査委員は同方針に沿って改善を求めた。
 自身が関係する企業・団体から職員を議員の補助員として従事させ、その法人に人件費を支出しているケースも。岡本代表監査委員は「実態があればいいが議員が関係する団体なら疑念が生じる。どういう場合に認めるか、基準を明確化してほしい」と求めた。また、職員の勤務日数と支払い金額だけを記した領収書しか添付されていないなど、職員の勤務実態が不明確なケースも多いとし、勤務簿提出の義務化を提案。借り上げた事務所の修繕に政務調査費を充当した例も問題視した。このほか、政務調査費で支出した各種会費や食糧費、宿泊費について「政務調査活動との関係が不明確なものがある」とし、透明性の確保を求めた。伊藤議長は「県民目線で疑念のない形にする必要がある」とし、ガイドラインの見直しを協議する考えを示した。

 県議会情報公開審査会(会長=永山正男・鳥取大教授)は29日、県議会が部分開示した昨年度の政務調査費(政調費)の出納簿を全面開示するよう求めた異議申し立てに対し、個人情報に該当しないものは開示するのが妥当だと、伊藤美都夫議長に答申した。
 県民から県議の政調費に関する情報公開請求を受け、県議会は8月、政調費の出納簿を部分開示した。だが、資料は「議員の政治活動に支障を及ぼすおそれがある」として支出先や購入先を公開しなかった。これに対し、請求者は9月に異議を申し立てていた。審査会は「公費である政務調査費の支出、購入には『政治活動に支障を及ぼすおそれ』が介入する余地は少なく、あっても極めて限定的」とし、個人情報に該当するものを除き、開示すべきだとした。請求者は同時に政調費補助員の資料も全面開示を求めたが、県議会は名前のみ公開したため、住所や給料額なども開示を求めた。審査会は住所などは個人情報に当たるとし、「開示することは適当でない」とし、部分開示が妥当とした。
 一方、審査会は、補助員の勤務実態が現在の書類では十分に裏付けられていないとして改善を求めた。政調費に関しては、県監査委員の岡本康宏・代表監査委員が28日、伊藤議長に対し、使途の明確化のため、ガイドライン(指針)を見直すよう申し入れた。定期監査での指摘事項はなかったが、補助員の人件費では、親族と思われる者を雇用したり、県議の関係企業から職員派遣や出向が行われたりしているとし、「県民の理解が得られにくい」とした。また、補助員の勤務実態について、岡本代表監査委員も不明確だとし、賃金台帳や勤務簿などの提出も義務付けるよう検討を求めた。事務所の維持修繕費についても賃貸事務所の修繕費に使った例があったとし、維持修繕費を政務調査費に充当する場合の基準を検討する必要があるとした。

本記事では,鳥取県における監査委員による同県議会への申入れ及び情報公開審査会の答申結果を紹介.
第1記事で紹介されている監査委員による「申入れ」*1は,現在のところ確認できず,残念.一方,第2記事で紹介されている答申を拝読させていただくと,まずは,「全議員の平成23年政務調査費出納簿に記載された支出,購入先事業者名」は「支出,購入の相手方が個人の場合」で「情報公開条例第8条第2号の個人情報に該当すれば,非開示とすべき」ではあるものの,「政務調査費出納簿に記載されている支出,購入先事業者名」は「「政治活動に支障を及ぼすおそれ」は認められず,開示すべきものと判断する」との結論を示されている.一方で,「政務調査費補助員」に関しては,その補助員の「平穏な私生活を守ることも重要」であること,そして,「これらの情報は本来的に個人情報であ」ること,そして,「情報公開条例第10条の規定により住所,給料額等までも開示することは,公益上の必要性の見地からも適当でないと考え」*2が示されている.
自治体ごとに個性がある」*3とされる情報公開制度.「執行機関法定主義ゆえに」「裁決機関としての審査会を設けることはできず」「諮問機関として審査会を設置するにとどめざるをえない」*4ものの,審査会の運用もまた「個性がある」とすれば,事実上の裁決機関化としての運営もされることもあるのだろうか.要確認.

*1:鳥取県HP(県政情報広報・広聴報道提供資料県政一般・報道提供資料)「(2684)鳥取県代表監査委員から県議会議長への申入れ

*2:鳥取県HP(県政情報広報・広聴報道提供資料県政一般・報道提供資料(2724)鳥取県議会情報公開審査会から議長への答申)「答申第24−1号」(平成24年11月29日)3,4頁

*3:柴田直子「第3章 参加と統制」柴田直子・松井望編著『地方自治論入門』(ミネルヴァ書房,2012年)64頁

地方自治論入門

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*4:宇賀克也『地方自治法概説第4版』(有斐閣,2011年)243頁

地方自治法概説 第4版

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