第2次大戦前後の昭和史の舞台にもなった元首相近衛文麿(1891〜1945年)の私邸「荻外荘(てきがいそう)」(東京都杉並区荻窪2)の敷地を、地元の杉並区が買い取り、公園に整備することになった。区は具体的な活用案を有識者らに話し合ってもらい、2017年度に開園したい考えだ。 (竹島勇)
 武蔵野の豊かな自然が残る荻外荘の敷地は六千平方メートル超の広さ。邸宅は平屋一部二階建ての和風建築で、広いときで延べ床面積が約五百平方メートルあった。大正初期に建てられ、昭和の初めに近衛が取得した。首相だった一九四一年十月、荻外荘の応接間で東条英機陸相らと日米開戦の是非を話し合った。敗戦後の四五年十二月、戦争責任を問われ、五十四歳で書斎で服毒自殺した。最近まで近衛の次男で元東大教授の通隆さん夫妻が住んでいた。昨年二月に通隆さんが死去した後に妻も邸宅を離れた。この間、複数の業者によってマンション建設などの開発計画が浮上していた。
 計画に不安を感じた周辺の十の町会・自治会が昨年六月に区に「みどりと歴史文化を失うことは地域と区のイメージ低下につながる」と保全を要請。区が通隆さんの妻に譲渡を持ち掛けたという。荻外荘は荻窪駅南口から徒歩で約十分。元老西園寺公望が「荻窪の外だから」と命名したとの説もある。車道に面した重厚な門に「近衛」の表札がある。内部は公開していない。近くに住む男性(72)は「緑と建物を残してほしかった。区が保全してくれるならありがたい」と話した。区は新年度予算案に取得費用などとして、三十一億四千五百七十三万円を盛り込んだ。

本記事では,杉並区における「荻外荘」の敷地購入方針を紹介.2013年度予算に取得費用が計上.概要は,2013年2月1日の同区長記者会見配布資料を参照*1
取得額は,本記事でも紹介されているように「31億4,57万円」.同資料では,「荻外荘(荻窪二丁目)敷地を公園用地として取得」することにより,「豊かなみどりに囲まれた,地域の景観形成に貢献する憩いの空間として整備」が目的.加えて,「観光・文化振興への活用策など地域の活性化についても検討」*2する予定ともある.未だ取得費用のみではあるもの,公園整備後も,「館政治」*3の空間でもあった「荻外荘」自体は保存されるのだろうか.要確認.

*1:杉並区HP(区政資料区長記者会見資料区長記者会見資料平成24年度記者会見)「次世代に夢と希望を拓ひらく予算 平成25年度当初予算(案)の事業概要

*2:前掲注1・杉並区(次世代に夢と希望を拓ひらく予算 平成25年度当初予算(案)の事業概要)10頁

*3:御厨貴『権力の館を歩く』(毎日新聞社,2010年)266頁

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