がんの早期発見などを目的とした検診車でのX線撮影への対応について、県内の自治体が頭を抱えている。検診車では、ほとんど放射線技師が撮影しているが、医師が立ち会わない場合について、国が「違法」と判断したためだ。これを受けて下関市は1日から胸部検診車の運用を中止。医師不足に悩む他の自治体も情報収集に追われている。(古藤篤)
 違法の疑いは、昨年春に浮上した。検診車で巡回サービスを行っていた下関市に対し、市民が「(医師がいないのは)法律違反ではないか」と指摘。市が県を通じて国に問い合わせたところ、今年2月に厚生労働省から「現場に医師がいないのは違法」との回答があった。
 診療放射線技師法は「技師は医師または歯科医師の具体的な指示を受けなければ、放射線を人体に照射してはならない」と定めており、厚労省の見解はこれに則したものだ。一方、検診車については、1978年の衆院予算委員会で当時の厚生大臣が「(医師が)包括的な指導、あるいは監督(する)ということもある。集団検診などの実施に配慮していい」と答弁し、医師がいない運用の支えになっていた。
 下関市はX線撮影機を備えた肺がんと胃がんの検診車を各1台所有。毎年度、支所や公民館などで約160回の検診を行ってきた。2011年度も約7000人が利用したが、今回の「違法」判断を受け、肺がん検診車の運用を中止。運用委託している胃がんの検診車も委託先と対応を協議している。市は「医師である保健所長の指導を受けて実施していた。大臣答弁から法令上、問題はないと考えていた」とする。
 県によると、下関市以外の市町も県予防保健協会などに運用委託する形で巡回サービスを行っており、影響が広がっている。6月に集団検診を予定している周南市は「国や県の指示を待って協議したい」と対応を保留。岩国市も「国や県から指示がなく情報収集している段階」と困惑する。防府市は「全ての検診車に医師は同乗できない」などとして、検診車の運用について、県に指示を求めているという。医師を何とか確保して5日から検診を実施するという防府市は「指示がない状況が続けば、今後は中止も視野に入れなければならない」。山口市は「委託先と調整し、(医師配備のために)検診車の台数を減らすことも検討する」としている。下関市は「国や県には、市民サービスが低下しないように現実的な対応を考えてもらいたい」と求めている。

本記事では,下関市におけるがん検診車の取組中止を紹介.
診療放射線技師法では,第26条第1項にいう「診療放射線技師は,医師又は歯科医師の具体的な指示を受けなければ,放射線を人体に対して照射してはならない」との規定に対して,2013年3月30日付の山口新聞でもによると厚生労働省は2013年2月に「レントゲン車に医師が同乗しないのは診療放射線技師法に違反する」*1との見解を提示.同市では2012年度は「検診車」による「胃がん検診」*2を年20回実施されてきたものの,2013年4月1日から中止されている.
また,本記事では山口県に位置する他市の動向を紹介.加えて,上記の同記事では「全国で実施されている検診車でのレントゲン撮影は,診療放射線技師のみで行なっており」「医師がたちあうことはほとんどない」*3とも報道.
2013年3月29日付のNHKニュースでは「日本診療放射線技師会や結核予防会」が全国の約「650の医療機関を対象」実施した「アンケート」調査の結果を報道(回答357施設,回答率55%).同報道では「医師の立ち会いがないまま検診車でレントゲン撮影を行っている医療機関は「胃がん検診でおよそ57%,肺がん検診でおよそ53%」*4であった,という.中止または停止は「波及」*5するのだろうか.要確認.

*1:山口新聞(2013年3月30日)「検診車の肺がん検診中止 下関市、医師同乗なし「違法」

*2:下関市HP(健康・医療健康診査・がん検診健康診査のお知らせ)「胃がん検診(検診車)日程表

*3:前掲注1・山口新聞(2013年3月30日)

*4:NHK(2013年3月29日付)「「検診車」のがん検診 医師確保難しく

*5:秋吉貴雄,伊藤修一郎,北山俊哉『公共政策学の基礎』(有斐閣,2010年),250頁

公共政策学の基礎 (有斐閣ブックス)

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