自治体の公共政策

自治体の公共政策

本日は,岩崎忠先生よりご恵与賜りました同書.岩崎忠先生,誠にありがとうございました.
公共政策に関する基礎的な制度や仕組みと理論を,丁寧かつ明解に解説されている第1章・第2章は,初学者が本書を手にすれば,自治体の観点からの公共政策を学ぶための基礎概念を一冊で理解することができる,公共政策の学びのための道しるべのような,たいへんバランスよいテキストと存じました.
そして,本書の特徴は,第1章,第2章の基礎的な説明を踏まえて展開された第3章にあると存じました.トップダウン型の条例としての受動喫煙条例,ボトムアップ型の条例としての建設発生土対策条例,地球温暖化のための政策ミックスと,いずれの節も理論と実態が見事に一致された,リアリティと理論が融合された章と存じました.
第3章のなかでも公共用地買収を扱う第22節と第23節はまずは読むべき節とも存じました.二つの節では,公共用地買収行政の特徴を解説していますがそれに留まらず,自治体の行政の観点に立ったときの合意調達の意味とは一体何かを考えさせられる,たいへん迫力のある節と存じました.
特に,自治体の行政の観点からの合意調達のための戦略を「情報戦略」「包摂戦略」「組織戦略」「資金戦略」「権力戦略」にまとめられ,「時間による戦略」のもとでの各戦略の配置は,いずれも理論的な鮮やかさを感じるとともに,実務面での合意調達のためのガイドラインとなりうる内容と拝察いたしました.特に,合意調達と説明責任をめぐる実際上の緊張関係を描いた次の指摘は,なるほどと存じました.

合意調達を行なう上で,対象となる利害関係人の優先順位には明らかに差があり,特定の者に対してのみに説明し合意調達を行なって事業を進めているので,現実には合意調達と説明責任とは対立関係にある」(149頁)

心より御礼を申し上げます.誠にありがとうございました.