財政難の目黒区は十日、百七十五ある区の施設の現状と課題を示した「目黒区施設白書」を公表した。施設の三分の一以上が築三十年を超えており、改修費の見通しなどを示して統廃合に向けた区民の判断材料としてもらう。五月九日まで区民に意見を募集する。
 区は、昨年十月に設置した施設見直しの有識者会議の議論や区民の意見を踏まえ、来年三月末までに方針を決める。白書は、各施設の設置目的や業務内容、老朽化の状況や維持管理費、改修・改築費の見通しなどを示している。区によると、全施設の維持管理費は年間二百億円で、特別区税など経常的歳入の36%を占める。全施設を維持した場合、大規模改修や建て替えなどに本年度から十年で七百十一億円かかると試算される。青木英二区長は白書で「防災・防犯や福祉、教育、環境など区民要望の高い施策への影響が懸念される」と指摘した。
 一方、保育所の待機児童対策など区民の要望は変化しているとも指摘。区の施設の見直しについては、経費の削減と区民要望の変化の両面から考える必要があるとした。白書はA4判二百五十六ページ。区ホームページのほか、区役所の区政情報コーナー、図書館などで閲覧できる。(滝沢学)

本記事では,目黒区における『施設白書』の公表を紹介.同白書の内容は,同区HPを参照*1
同白書によると,同区では2012年度末段階で「複合施設を1つとして捉えて建物ごとに数えると175施設」,「単独・複合施設を個々の用途別に数えると317施設」を保有.「年間維持管理経費」は「22年度決算値で約200億円」と「経常的一般財源の約36%を占め」る.加えて,175施設の「3分の1以上が築30年以上を超え老朽化」しており「一斉更新時期」となり,「大規模改修や建替え(改築)」には,2013年度からの10年間で「修繕や大規模改修等に要する経費は約558億円」,「建替え(改築)経費」は「約153億円」の「経費がかかることが見込まれている」*2
今回,同白書にまとめ,パブリックコメントを実施.同書は第2章では人口や財政状況,第3章では各保有資産の現況,第4章は区有施設の用途別の実態把握の結果を整理する.第5章で施設の見直しの進め方という今後の施設の考え方は示されてはいるものの,むしろ同白書の力点はその実態調査結果にある.
例えば,2008年12月7日付の本備忘録で項目立てを試みて以来の本備忘録の断続的な観察課題のひとつ「庁舎管理の行政学」の観点から,1966年築の同区庁舎(総合庁舎)の現状部分を拝読させて頂くと,行政コスト計算の結果(2010年度)では,まず施設運営のコストは605,056,095円となる.内訳は,職員人件費が94,728,000円,修繕費は1,269,302円,工事請負費が46,073,527円,光熱費が127,333,024円,委託料が306,313,790円,賃貸料・共益費が19,351,208円,その他経費が9,987,244円となる.次いで,事業運営のコストは992,250円(全額,業務委託費)となる.そして,トータルコストでは「6億9,420万円」となる.同内訳から職員人件費が随分と少ない額と思われるものの,「総合庁舎の職員人件費は,総務課庁舎管理係に配属されている庁舎管理を担っている職員のみ」*3とのこと.なるほど.
同白書自らが「「施設の現状についての見える化」の手法」*4と位置づけるように,まさに「合理的なデータの提供と丁寧な説明」*5の機会を提供している.「見える化」された同白書を(データで)持ちながら,175の一つひとつの施設を実際にも見てみたくなる内容.区民ではない下名もまたしっかりと精読しよう.

*1:目黒区HP(行政情報計画・政策計画・施策区有施設見直しの検討状況)「目黒区施設白書を作成しましたので、公表し、ご意見を募集します

*2:目黒区HP(行政情報計画・政策計画・施策区有施設見直しの検討状況)「目黒区施設白書を作成しましたので、公表し、ご意見を募集します )『目黒区施設白書』(目黒区,平成25年3月)3頁

*3:前掲注2・目黒区(目黒区施設白書)62頁

*4:前掲注2・目黒区(目黒区施設白書)4頁

*5:小島卓弥編著『公共施設が劇的に変わるファシリティマネジメント』(学庸書房,2012年)171頁