和水町上和仁の地元住民らが約20年前、地区を流れる和仁川にコンクリート製の橋を設置し、今も生活道路の一部として使っている。しかし、川を管理する県の許可を得ておらず、今年3月に事態を把握した県は橋の撤去を4月中にも求める方針だ。住民らは「日常生活に支障が出る」と配慮を求めている。
 橋は全長約16メートル、幅3メートル。集落と神社や水田がある対岸の土地とを車で往復したり、農機具を運び入れたりするため、住民らが所有する重機などを使い、U字溝や管状のコンクリート廃材などで造った。
 増水時は橋が水中に沈む「沈下橋」で、橋付近に堆積した土砂は住民が年に6回ほど除去。これまでに大雨で川があふれたことはないという。橋に通じる道路の町道認定のため、町職員らが現地を訪れ、無許可設置が分かった。橋を設置する前、住民は飛び石づたいに対岸に徒歩で渡るしかなかった。70歳代の男性は「対岸の神社は急斜面の上。地区は高齢者が多く、車でないと行けない。橋がなければ祭りも滞り、田に耕運機も持ち込めない」と不安を口にする。224人が暮らす同地区の高齢化率は42%だ。
 橋りょうの整備には河川法で河川敷の占用許可と設置許可などが必要と定められており、河川管理者が許可すれば民間でも整備できる。県は「橋の必要性は理解できる。しかし、法律上、無許可で設置はできない。川の流下能力などを確認した上で適法なものを整備してほしい」という。これに対し、同町は「橋の整備は数千万円かかるため予算的に難しい。ただ、水深が浅い部分の川底をコンクリートなどで固めれば車で川を渡れる。費用も300万円弱で、町で検討する余地がある」と話す。
 地方自治に詳しい県立大の桑原隆広教授は「国の一律の基準が地域の実情に合わないこともある。治水上問題なければ、県は今の橋を許可する柔軟さを持ってもいいのではないか。長野県下條村では経費削減のため、住民に建設資材を支給し、村に代わって施工してもらう要項を設けている。和水町のケースも住民自治のモデルになるのではないか」と話している。(猿渡将樹)

本記事では,熊本県における河川管理の取組を紹介.
和泉町の上和仁地区では,「道普請」*1ならぬ橋普請を実施.一方,本記事によると同地区での同取組に関して同町では「河川を管理する」熊本県の「河川法上の占用許可と設置許可」を「得ておらず」,そのため「県は橋の撤去を4月中にも求める方針」にある,という.
橋整備という「行政需要」と「行政による供給の関係」の類型からすれば,撤去という判断は,橋の整備が「過剰な要求」であるという「拒絶」という対応か,または「政治的非決定」*2という対応のいずれか分類にも該当しなくもない.また,もちろん整備費用やリスクから勘案すれば「行政に対する需要の全てを満たす」*3ことができないこともある.ただ,その費用とリスクを受け入れた「逆補完性の原理*4的な橋の整備もまた認められない,制度的な制約下にある「ムラの自治*5の難しさも窺える.「ムラの自治」による実態とクニの自治による制度との間は悩ましい.

*1:西尾勝自治・分権再考』(ぎょうせい,2013年)19頁

自治・分権再考

自治・分権再考

*2:曽我謙悟『行政学』(有斐閣,2013年)378頁

行政学 (有斐閣アルマ)

行政学 (有斐閣アルマ)

*3:前掲注2・曽我謙悟2013年:378頁

*4:金井利之『原発自治体』(岩波書店,2012年)11頁

原発と自治体――「核害」とどう向き合うか (岩波ブックレット)

原発と自治体――「核害」とどう向き合うか (岩波ブックレット)

*5:前掲注1・西尾勝2013年:19頁