「特別自治市」の早期実現に向け、横浜、川崎、相模原市など七つの政令指定都市が共同で取り組んできた研究を報告書にまとめ、17日公表した。報告書は、特別自治市をつくるために必要な地方自治法改正のたたき台も示している。
 報告書をまとめたのは、横浜、川崎、相模原、さいたま、千葉、京都、神戸の7政令市。特別自治市を目指す横浜市の呼び掛けで2011年から、事務方レベルで研究を重ねてきた。報告書では、現行の指定都市制度の課題などのほか、地方自治法の改正案も示した。「特別自治市の要件」として「特別自治市は、都道府県の区域外とする」「特別自治市は、指定都市の中から法律でこれを指定する」などと定義した。横浜市はすでに制度の基本理念などをまとめた「横浜特別自治市大綱」を策定している。

本記事では,「指定都市7市による大都市制度共同研究会」における報告書の公表を紹介.
さいたま市千葉市川崎市横浜市相模原市京都市,神戸市から構成される同研究会の設置は,2011年7月29日付及び同年11月2日付の両本備忘録で記録.「第1回研究会」を2011年10月31日の開催後は,第2回を2012年1月18日,第3回を同年2月15日,第4回を同年8月7日,第5回を2013年3月28日を開催し,今回の報告書をまとめられている.同報告書は,「座長市」*1横浜市HPを参照*2
同報告書では,「特別自治市」の「基本的枠組み」を整理.具体的には「 市域内におけるすべての地方の事務を処理」すること,「市域内の府県税と市税のすべてを賦課徴収」すること,「市域に行政区を設置し,一体的に大都市を経営」すること,「地域特性を踏まえた都市内分権,住民自治機能の強化」を図ること,「周辺基礎自治体等との水平・対等な連携の仕組みの構築」することにある.
また,同報告書では,上記のように,従来からの「ただ単に財源を維持,増強するだけ」ではなく「シンプルで効率的」*3とされる「特別自治市」構想を再整理されたことに加えて,「地方自治法改正案(要綱)概要」を提案.同要項概要は,以下の通り*42009年12月6日付及び2012年8月30日付の各本備忘録でも言及した地方自治法にいう「全国的連合組織」の範疇に対しては,下記の通り「特別自治市市長又は特別自治市の議会の議長は,全国的連合組織」の設置と断言されている点は,特徴的.

地方自治法第三編特別地方公共団体に以下の第5章を加える.
第5章特別自治市
特別自治市の事務)
特別自治市は,地域における事務及びその他の事務で法令により特別自治市が処理する事務,並びに法令により都道府県及び市が処理する
事務を処理する.
特別自治市の要件)
特別自治市は,都道府県の区域外とする.
特別自治市は,指定都市の中から法律でこれを指定する.
特別自治市の住民)
特別自治市の区域内に住所を有するものは,当該特別自治市の住民とする.
特別自治市の長,補助機関)
特別自治市に市長及び副市長を置く.
(行政区の設置)
特別自治市の市長の権限を分掌させるため,条例でその区域を分けて行政区を設け,その事務所を置く.
・行政区の事務所の長として区長を置く.
・行政区には選挙管理委員会を置く.
特別自治市は,条例で各区ごとに区地域協議会又は地域特性を踏まえた住民自治機能強化のための組織を置くことができる.
(全国的連合組織)
特別自治市市長又は特別自治市の議会の議長は,全国的連合組織を設けることができる.
都道府県・市に適用される規定の準用)
・この法律又はこれに基づく法令に特別の定めがあるものを除く他,第2編中都道府県に関する規定及び,市に関する規定は特別自治市にこれを
適用する.
・ただし,第5条第2項,第8条の2(以下略)中市に関する規定,第19条及び第155条中都道府県に関する規定はこれを適用しない.

加えて,同報告書では「今後の検討事項等」も明記.例えば,2013年3月29日付の本備忘録で記録した横浜市がまとめた「横浜特別自治市大綱」では「引き続き検討」と位置づけられた「警察事務」に関しては,同報告書では「都道府県同様,公安委員会を設置し警察事務を担うことを基本とすべき」*5との方針をまずは示されている.「広域捜査」*6等は「広域自治体へ一部事務委託」案も示しつつも,最終的には「横浜特別自治市大綱」と同様に,地方制度調査会専門小委員会の報告書を踏まえつつ「引き続き検討が必要」とも位置づけている.「警察事務」以外にも「市域内府県立施設」への対処,「道州制*7や「周辺市町村との財政的な関係性」としての「水平的財政調整制度」も「検討事項」*8とされている.
同報告書が提案された「地方自治法改正案(要綱)概要」,そして「引き続き検討」への今後の検討状況は,要確認.

*1:横浜市HP(組織政策局大都市制度推進室大都市制度推進課7市共同研究会)「研究会の運営方法」なお,各市からの委員は,次の通り.さいたま市は政策局都市経営戦略室 副理事,千葉市は総合政策局総合政策部長,川崎市は総務局行財政改革室長,横浜市は政策局大都市制度推進室長,相模原市は企画市民局企画部長,京都市は総合企画局 政策企画室長,神戸市は企画調整局企画調整部長.

*2:横浜市HP(組織政策局大都市制度推進室大都市制度推進課7市共同研究会研究会の運営方法)「「特別自治市」の早期実現に向けて(共同研究会報告書)」(指定都市7市による大都市制度共同研究会.2013年4月)

*3:林文子『共感する力』(ワニブックス,2013年)98頁

*4:前掲注2・横浜市(「特別自治市」の早期実現に向けて(共同研究会報告書))19頁

*5:前掲注2・横浜市(「特別自治市」の早期実現に向けて(共同研究会報告書))19頁

*6:西尾勝自治・分権再考』(ぎょうせい,2013年)194頁

自治・分権再考

自治・分権再考

*7:前掲注2・横浜市(「特別自治市」の早期実現に向けて(共同研究会報告書))20頁

*8:前掲注2・横浜市(「特別自治市」の早期実現に向けて(共同研究会報告書))21頁