行政機関が条例違反などの状態を強制的に是正する「代執行」について、総務省有識者検討会が有効な活用を求める内部報告書をまとめた。多くの自治体がノウハウ不足から行使をためらいがちだが、特に倒壊などの恐れがある空き家の撤去に効果を発揮するとしている。
 代執行は、空き家や放置自転車の撤去などを違反者に代わって行政機関が行う制度で、「行政代執行」とも呼ばれる。自治体の判断で執行可能だが、違反者への説得を打ち切るタイミングが計りづらいことや、市民に強権的なイメージを与えるといった課題があり、実行例は極めて少ない。
 報告書は、違反状態の改善が見込めない場合の代執行を「自治体の公益を実現するための取り組み」と位置付け、全国で広がる倒壊・ごみの不法投棄などの恐れがある空き家の撤去に用いるよう求めた。

本記事では,総務省に設置された「地方分権の進展に対応した行政の実効性確保のあり方に関する検討会」の報告書を紹介.同報告書に関しては同省HPを参照*1
本記事では「機能不全」*2とも解されることもある代執行を紹介.一方で,同報告書では,代執行に限らず「行政上の実効性確保に関する制度」*3を広く対象におく.同報告書では,各制度類型に基づく変遷や運用状況を整理し,これらを踏まえた「検証・検討」*4が行なわれている.その結果,「政策課題の性質や内容に照らし,その解決のために行政上の強制執行が最も適切な手法であると認められるときには,これを過不足のない程度・態様によって行使できるよう,必要な制度を整備することが望ましい」*5との考え方に立ち,「改革の方向性」*6を提示されている.
具体的には次の通り.「現行制度の活用・拡充」策では,まずは,国の法律,自治体の条例がともに「立案時に」「履行確保や強制執行手段を見通した検討」を促すことを提案する.次いで,「個別法」「強制執行手段の創設・拡充」を提案する.例えば,「代執行」では「要件及び手続の緩和・明確化」や「費用の事前徴収制度の創設」*7,「直接強制」*8と「間接強制(強制金)」の「創設」*9を提案する.
また,さらに「個別法の整備が進むとき」を想定し「これらを一般法・個別法として体系的に法制化すること」も提案する.具体的には次の通り.まず「一般法」では,「強制執行手段のメニュー(代執行,強制金,直接強制など) とそのルール( 比例原則などの基本原則,要件,手続など)を規定」する「メニュー化」と「各個別法に定められた個別の義務とそれに対応する強制執行手段を一覧的に掲げる」「リスト化」という「強制執行手段のメニュー化とリスト化」を行なうこと.そして,「義務を定める個別法」では「個別の義務」を「一般法に定めるメニューからとるべき強制執行手段を選択して,明示的に規定する」「マーキングという方法」*10を提案されている.
実効性確保の制度整備とともに,制度を動かす(または,動かさない)ための「戦略」をどのように「組み合わせ」*11ていくかも,制度整備後の課題となりそうか.今後の制度整備の状況は,要経過観察.

*1:総務省HP(広報・報道報道資料一覧2013年4月地方分権の進展に対応した行政の実効性確保のあり方に関する検討会報告書の公表)「地方分権の進展に対応した行政の実効性確保のあり方に関する検討会報告書」(地方分権の進展に対応した行政の実効性確保のあり方に関する検討会,平成25年3月)

*2:櫻井敬子『行政法のエッセンス』(学陽書房,2007年)160頁

行政法のエッセンス

行政法のエッセンス

*3:前掲注1・総務省地方分権の進展に対応した行政の実効性確保のあり方に関する検討会報告書)9頁

*4:前掲注1・総務省地方分権の進展に対応した行政の実効性確保のあり方に関する検討会報告書)23頁

*5:前掲注1・総務省地方分権の進展に対応した行政の実効性確保のあり方に関する検討会報告書)30頁

*6:前掲注1・総務省地方分権の進展に対応した行政の実効性確保のあり方に関する検討会報告書)31頁

*7:前掲注1・総務省地方分権の進展に対応した行政の実効性確保のあり方に関する検討会報告書)31頁

*8:前掲注1・総務省地方分権の進展に対応した行政の実効性確保のあり方に関する検討会報告書)32頁

*9:前掲注1・総務省地方分権の進展に対応した行政の実効性確保のあり方に関する検討会報告書)33頁

*10:前掲注1・総務省地方分権の進展に対応した行政の実効性確保のあり方に関する検討会報告書)33頁

*11:岩崎忠『自治体の公共政策』(学陽書房,2013年)143頁

自治体の公共政策

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