• 『地域自治組織等における人材の活用に関する研究会 報告書(平成24年度)』(財団法人自治研修協会,平成25年3月)

本日は,大杉覚先生,稲垣浩先生よりご恵与賜りました同報告書.大杉覚先生,稲垣浩先生,誠にありがとうございました.
本報告書は,財団法人自治研修協会が設置した地域自治組織等における人材の活用に関する研究会が行なった,自治会や町内会等の地縁組織と「地域課題の包括的な解決や地域住民の連携などを目的に設置され」「地縁組織やNPOなど多様な主体によって構成される」「地域協議組織」(2頁)を対象とした郵送質問紙調査結果,5つの自治体(田原市瑞浪市大阪狭山市笠岡市福山市)への現地調査結果をまとめています.調査結果からは,「「地域協議組織」の構造」の多様性とともに「「協議」に止まらない多様な活動が観察」(76頁)されています.
本報告書が掲載する二つの調査結果は,いずれも「一住民としての自治体職員の地域自治組織等への参加の状況」と「公務として自治体職員を地域に関わらせるしくみの整備状況」(4頁)の把握に力点を置かれている点は,本報告書の特徴と推察されます.例えば「職員が所属する課の業務」に関する調査結果では「所属する課との業務と特に関係しておらず,地域自治組織の担当課とも特に連携していない」という回答が地域組織,地域協議組織のいずれの場合も最も高い結果が分かります(93頁).既存の組織業務と地域組織等の業務との間でマッチングの難しさを窺うことができそうです.
同報告書でもその現状把握が行ない,大杉覚先生が『市政』2013年4月号に寄稿された「地域担当制は何をもたらすのか」*1でも更なる考察が進められています地域担当職員制度は,「3分の1程度の職員が地域担当職員」(46頁)を置く笠岡市への次の観察結果と考察からは,上記の地域組織等の業務と組織業務のマッチングとともに,地域職員と組織職員のマッチングの難しさもまた窺うことができ,なるほどと思いました.

調査では,同時に担当職員にはあまり向いていない職員が存在することも事実であることも分かった.また,地域での活動に不向きで地域担当職員にならないような職員と積極的に活動する職員の間でどう公平を保つかについても今後検討する必要があろう.」(46頁)