地方の王国 (講談社学術文庫)

地方の王国 (講談社学術文庫)

本日は,来週の研究会と2013年6月2日に開催される日本公共政策学会の一つのセッション*1での司会準備のために「旧新潟三区」のことを整理しておこうと思い,同書.
「”影の県庁”の役割」たる役割−「国の資金を分捕って各市町村に配分する」−を果たす「越山会と田中事務所」(29頁)の活動へのインタビュー調査等から,「高度経済成長の下でつくられた利益誘導型の集票構造」が「根の張」(10頁)った「庇護と随従の民主主義」(272頁)を描く本書.
学部生の頃に大学の図書館で読んだなあと懐かしく思いつつ,講談社学術文庫版が出版されていたので購入.学部生の時は,インタビューに基づく語り部分(引用)の多さを躊躇いながら初読したことを思い出しながら,随分久しぶりに読んでみると,むしろその語りが面白い,民族誌的な効果をもち,新潟,千葉,北海道,鹿児島,徳島,滋賀の各地を立体的に読むこともできる政治の描き方としても勉強にもなりました.
例えば,その語りの面白さのなかでも,「何事も金銭で決済する」「気風」(99頁)なかでの実際の「現ナマ」の配り方に関する,次の指摘にはなるほどと思いました.

とにかく,現ナマを配るというのは,麻薬と同じようなものです.一度配ると二度目から配らないというわけにゆかない.他派が配りはじめると自分のところだけやらないというわけにゆかない.エスカレートするばっかりです」(77頁)