物質的な豊かさではなく、住民が感じる「幸福度」の向上を行政の目標にしようという全国の三十六区市町村が、「幸せリーグ」と名付けた連合体を結成する。どんな施策が幸福実感につながるかを模索し、各自治体で生かす狙い。発起人代表は東京都荒川区で、六月五日に第一回首長会議を同区内で開く。
 幸せリーグの正式名称は、「住民の幸福実感向上を目指す基礎自治体連合」。荒川区は、「国民総幸福量(GNH)」を国家の指標としているブータン王国を手本に、区民の主観的な幸福実感をはかる指標「荒川区民総幸福度(GAH)」のプロジェクトチームを二〇〇五年に発足。〇九年に設立した区自治総合研究所で本格的に指標作りを進めている。指標をもとに施策の重点を決める考えだが、まだ施策に反映した例はない。
 リーグに参加するのは、GAHに着目して区を視察したり、以前から交流があったりした自治体。区の実践を参考に昨年、「幸福のまちづくり研究会」を立ち上げた京都府京丹後市と、友好都市の茨城県つくば市が発起人に名を連ねた。このほか、「幸せシティサポーター会議」を創設した三重県松阪市などが参加予定。GAHの研究に携わってきた神野直彦東京大名誉教授(地方財政論)、広井良典千葉大教授(公共政策)らが顧問を務める。荒川区西川太一郎区長は「『幸福度』と言うのは簡単だが、何が住民の幸せにつながるかは、なかなかつかめない。他自治体の取り組みなどを生かし、連携したい」と話している。 (竹上順子)
国民総幸福量(GNH)> 「国民総生産(GNP)より重要」として1970年代にブータンの前国王が提唱した。「健全な経済発展」「文化保護」「環境保全」「良い統治」の四つを柱に9分野、72の指標について国民の満足度を調べ、政策に反映させている。

本記事では,荒川区が発起人となった連合体の取組を紹介.同取組は,同区HPを参照*1
同取組は,「誰もが幸福を実感できる地域社会を築いていくため」の「住民の幸福を基点とした行政運営に取り組もうという」を「問題意識を共有する個々の自治体が連携」する「住民の幸福実感向上を目指す基礎自治体連合(幸せリーグ)」を「結成」するもの.具体的には,代表が荒川区,幹事がつくば市京丹後市となり,2013年4月22日現在では36市町村*2の「首長会議」「実務者会議」「顧問」「事務局」*3の4層から構成さ,これにより「首長や実務担当者が連携」し「互いに学び合い」「レベルアップしていくこと」により「より住民の幸福につながる政策形成が行われること」,そして,「検討内容を全国に発信すること」により「全国の自治体にも効果の波及を期待する」ことが目的である,という.
36市町村それぞれが独自に想定されているであろう「幸せを感じられる範囲」*4が,同連合を通じて,個別自治体の「幸せ」を包摂したより広い範囲に設定されるのか,または,構成自治体の総体として,共通性に重点を置くことでより限定された範囲に設定されることとなるのか,今後の「検討内容」は,要確認.

*1:荒川区HP(区政情報広報報道発表)「住民の幸福実感向上を目指す基礎自治体が「幸せリーグ」を結成します!

*2:具体的には,次の通り.釧路市北見市北広島市斜里町広尾町むつ市,滝沢村,米沢市鮭川村福島市二本松市桑折町,石川町,小野町,秩父市,川島町,鴨川市大多喜町三条市妙高市射水市南砺市加賀市南アルプス市安城市長久手市松阪市亀山市守山市川西市益田市田川市佐賀市

*3:前掲注1・荒川区(住民の幸福実感向上を目指す基礎自治体が「幸せリーグ」を結成します!)

*4:御手洗瑞子『ブータン,これでいいのだ』(新潮社,2012年)212頁

ブータン、これでいいのだ

ブータン、これでいいのだ