横浜市は20日、市内の保育所待機児童数(4月1日現在)がゼロになったと発表した。2010年4月に全国最多の1552人だったが、昨春には179人に減らし、ことし4月の「待機児童解消」を目標に掲げていた。この間、市は予算を重点的に投入し、認可保育所、横浜保育室の拡充や全区に専門相談員を置くなど多様な対策に取り組んできた。5年後の待機児童ゼロを掲げる国は、横浜の改革を参考にする方針を打ち出している。
 市は09年以降、認可保育所160カ所を新設。定員を約1万2千人増やし、認可保育所は580カ所、定員は4万8916人となった。
 今春の申込者数は4万8818人(前年比3111人増)で、入所できた児童数は4万7072人(同3740人増)。580カ所のうち、266カ所で定員以上(計2198人)を受け入れた。希望通りの入所ができなかったのは1746人で、市が独自に認定している横浜保育室などへ紹介している。市はこれまでに、NPOなどに委託する家庭的保育事業、幼稚園での預かり保育など多様なサービスを全国に先駆け展開。また、マンション開発などの情報を基に地域の保育需要を調査。地権者と保育所の運営法人を結び付け、2年間で18の保育所(定員約1300人分)を誕生させた。施設整備とともに、保護者の細かなニーズ把握とそれに見合うサービス提供などにも力を入れ、11年から全18区に専門の相談員「保育コンシェルジュ」を配置。認可保育所に入れなかった保護者には、他のサービスを紹介している。
 国が「横浜方式」と評価している点について、林文子市長は「具体的な中身はそれぞれの自治体がすでに行っている。民間と行政が手を携えてやれば、難しいことではない」と話し、「待機児童ゼロの目標達成はスタート地点。来年に向け、さらなる努力と続けたい」と述べた。

 林文子市長が目標に掲げた「保育所待機児童ゼロ」を達成した横浜市。市内の認可保育所数は、ここ3年で1・3倍超に増え、子育て世代の母親からは「保育園に入りやすくなった」と評価する声が聞かれる。一方、保育の現場からは定員割れに苦しむ声も。市は今後も限りなくゼロに近い状態を継続しつつ「保育士の確保」や「保育の質の維持」など、新たな課題に取り組む考えだ。
 ことし2月中旬、1歳2カ月の娘を持つ母親(35)=戸塚区在住=は祈るような気持ちで一通の封筒を開けた。「選考の結果、入所内定しましたのでお知らせします」。第1希望の認可保育所への内定通知だった。同市は2009年1290人、10年1552人と2年連続で待機児童数が全国でワーストだっただけに、ここ数年での劇的な改善ぶりに驚きを隠せない。「これで復職できる。本当に良かった」。安堵(あんど)し、夫と喜びを分かち合った。
 施設整備の進展は肌で感じている。ここ数年、自宅から最寄り駅にかけて認可保育所がいくつも開所。内定が決まったのも、そのうちの一つだ。娘と同世代の子どもを持つ市内の“ママ友”6人のうち、4人は第1希望の認可保育所に決まった。認可保育所に入れなかった2人のうちの1人は横浜保育室にし、もう1人は復職を諦めた。
 横浜に比べて、都内の友人からは厳しい状況が聞こえてくる。西東京市の友人は第1子と同じ認可園を希望したがかなわず、杉並区の友人は認可保育所にも、都が補助金を出す認証保育所にも入園できなかった。「数年前のままだったら横浜も同じ状況だったのではないか」と顔を曇らせる。
 新規開所は保護者からは歓迎されるが、保育現場からは「定員割れで採算が合わない」との悲鳴が上がる。市によると、10年4月の認可保育所は436カ所だったが、13年4月には580カ所(公立90、私立490)となり定員も約1万人以上増加。13年4月現在、新設保育所の4〜5歳枠を除いた定員割れの保育所数は253カ所(2096人)に上るという。
 ことし4月に開所した南区の認可保育所(定員40人)は、市が指定した「整備が望まれるエリア」にもかかわらず、5月上旬の段階の入園者数は、わずか15人。採算ラインに遠く及ばない上、満員を想定して集めた職員は13人おり人件費が重くのしかかる。国も待機児童解消方針を打ち出したため保育士不足に拍車が掛かると予想され、経営者の男性は「余っていても保育士を解雇することもできない状況」と嘆く。市の担当者は「4月時点ではなく年間を通して考えればニーズがあるはず。定員割れは把握している。対策はこれから」と話す。市は定員割れの保育所に対し、空いている保育室を需要の高い低年齢児の定員外受け入れなどに活用するよう助言しているが、問題解決には至っていない。11年度には定員割れ対策として「送迎保育ステーション」事業を開始。子どもを駅から離れた保育所にバスで送迎することで需要と供給の“ミスマッチ”解消を図ったが、保育所の増加などで利用者が増えず12年度末に事業を縮小した。
 「待機児童ゼロ」の次の課題として「保育士の確保」と「保育の質の維持」を挙げる横浜市。林市長は「保育所潜在的ニーズはまだまだ高い。地域分析を進め、子育てしやすい町として支援策の充実に取り組んでいく」と話している。

両記事では,横浜市における待機児童数が0名となったことを紹介.
2011年1月4日付の本備忘録では「保育コンシェルジュ」の配置,2012年2月21日付の本備忘録では認可保育所設置に関する独自解釈と「従うべき基準」創設との間での思案等と同市の待機児童対策を記録しつつも,2010年から2013年度まで毎年,41,933名,44,094名,45,707名,48,818名と保育所申込者数は増加し,結果,2010年4月段階には1,552名,2011年年4月段階の971名*1の待機児童数の現状からすれば,待機児童の減少は可能であったとしても,0名に至ることは実際難しいのだろなあ,と思っていた同市の取り組み.その後,2012年4月現在では179名となり,そして,2013年4月1日現在で「対前年比で179人が減少し,0人」*2を達成されている(本当にすごいことですね).
一方で,第2記事でも紹介されているように,「認可保育所580園」では「266園(2,198人)」では「定員外入所を実施」されている一方で「253園(2,096人)で定員割れ」*3の現状もある,という.そして,定員外入所は2012年度が272園,2013年度は266園と6園減であることに対して,定員割れは179園から253園と74園増となる*4.「限り無くゼロに近い状態を継続」*5には,持続的に利用者と保育所間での「ミスマッチ」*6へのマッチングとしての「ふるいわけ」*7も取り組まれるのだろうか.今後の同市の取組も要観察.

*1:横浜市HP( 組織こども青少年局保育対策課保育対策課横浜市の待機児童対策)「平成25年4月1日現在の保育所待機児童数について」(横浜市記者発表資料,平成25年5月20日こども青少年局保育対策課)

*2:前掲注1・横浜市(平成25年4月1日現在の保育所待機児童数について)1頁

*3:前掲注1・横浜市(平成25年4月1日現在の保育所待機児童数について)5頁

*4:前掲注1・横浜市(平成25年4月1日現在の保育所待機児童数について)5頁

*5:前掲注1・横浜市(平成25年4月1日現在の保育所待機児童数について)6頁

*6:林文子『共感する力』(ワニブックス,2013年)98頁

*7:田尾雅夫『ヒューマン・サービスの組織』(法律文化社,1995年),131頁

ヒューマン・サービスの組織―医療・保健・福祉における経営管理

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