島根県は21日、県庁本庁舎(松江市)の耐震化工事について、2013年度末を予定していた完了時期がずれ込むことを明らかにした。江戸期の松江城の遺構が庁舎そばの地下に相次いで見つかり、肝心の強度アップ工事に着手できないため。工事進行を歴史遺産が阻んだ形で、完了の見通しは立っていない。
 計画では、震度7地震に耐える構造にするため、本庁舎にコンクリート補強を施す。着工には基礎工事のため、地下に埋まっている円柱状のオイルタンク(直径3メートル、長さ10メートル)を移設する必要がある。
 しかし、県庁の敷地は松江城三之丸跡に当たる。3月には、タンクの移設先と見込んだ地点で三之丸の池とみられる石積みを発見。このため移設場所を近くの別の地下に変えた。だが5月8日、変更した移設場所で、再び江戸期の礎石と溝が見つかり耐震化工事の一部を中断した。礎石と溝は専門家の調査を踏まえて価値を判断し、保存の是非を決める。ただ、判断にかかわらず早期着工は困難。再度タンクの移設場所を変えた場合、想定外の工事が必要となり、約18億円の事業費が大幅に膨らむ可能性もあるという。

本記事では,島根県における庁舎耐震改修工事の取組を紹介.同工事に関しては,同県HPを参照*1
1959年に,地上6階地下2階の延べ床面積㎡となる庁舎を鉄筋コンクリート造で竣工され「築53年」となる同庁舎.今回の耐震改修は「震度7クラスの大地震時に構造体に大きな損傷が生じず,人命の安全確保に加え,業務継続が可能な建物とする」ことを目的に実施.工事設計では「建物の文化的価値を尊重し,建物の外観イメージを損なわない計画」であること,「耐震性能を確保しつつ,執務空間の機能性を低下させない計画」であること,「大規模な執務室の移転を生じることなく,職員が「居ながら」の計画」であること,「居ながら」での施工のため「低騒音・低振動の工法・素材等を利用」*2すること,とある.耐震補強工事,外壁改修工事,銅製建具取替工事は2014年1月まで,西側耐震架構の建設は同年3月までの工程*3を想定.
一方,本記事によると「本庁舎にコンクリート補強」を図るための「基礎工事のため」に,地下の「円柱状のオイルタンク」を「移設」を要するものの,3月に予定していた「移設場所」では「松江城の「石積み」,5月に「変更した移設場所」では「江戸期の礎石と溝が見つかり」,「耐震化工事の一部を中断」されている,という.お城もいわば嘗てのお役所.「史跡整備で新築される歴史的建築物」*4として保存されることにもなるのだろうか.2008年12月7日付の本備忘録で項目立てを試みて以来の本備忘録の断続的な観察課題のひとつ「庁舎管理の行政学」の観点からは「第1章:建築と維持のポリティクス」としても考えさせられる.

*1:島根県HP(管財課庁舎と各課の配置本庁舎耐震工事の実施について)「県庁耐震改修補強工事 概要

*2:前掲注1・島根県(県庁耐震改修補強工事 概要)1頁

*3:前掲注1・島根県(県庁耐震改修補強工事 概要)2頁

*4:後藤治『都市の記憶を失う前に』(白揚社,2008年)161頁

都市の記憶を失う前に―建築保存待ったなし! (白揚社新書)

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