2010年4月に施行された「県受動喫煙防止条例」の3年ごとの見直し作業が始まる。6月に行う県民意識調査を皮切りに、県は夏と秋に有識者による検討会を開く。年内に見直しの有無を判断するが、規制強化を警戒する飲食店などの業界団体と禁煙推進団体の双方が陳情、要望活動を本格化させる構えを見せている。規制を強めるか、維持か−。紫煙をめぐる論争が再燃しそうな気配だ。
■「検討会」構成に異議
 「影響を最も受ける業界から委員を入れずに公平な検討ができるのか」。県が16日に公表した「県たばこ対策推進検討会」の委員構成に、飲食店などの業界団体に不満が広がった。
 検討会は、県が選任した医療関係者や行政関係者、県民代表ら11人で構成。専門的な立場から条例見直しの検討を行い、11月に県に意見する。規制強化を警戒する関係団体は業界からも委員を選任するよう県に陳情していたが、実らなかった。飲食店や旅館など17組合でつくる県生活衛生営業指導センターの八亀忠勝理事長は「(昨年3月に受動喫煙防止条例を制定した)兵庫県と同様、飲食業や旅館業などからも委員に加え、透明性のある検討をお願いしたい」と引き続き要望していく考えだ。見直しに向けては「顧客流出や分煙施設の設置費負担など深刻な影響を受けてきた。それでも各組合は条例の周知徹底や店頭表示に協力してきた。今回は(規制を強化せず)現行条例を維持してほしい」と話す。
■6月に県民意識調査
 条例の付則では、知事は施行から3年を経過するごとに施行状況を検討し、必要な措置を講じることとしている。県は6月に5千人規模の県民意識調査を実施するとともに、対象施設5500施設を調査する。2年前の調査結果と比較し、条例の認知度や飲食店・宿泊施設の対策状況、禁煙・分煙店舗の利用頻度などの経年変化を見る。事業者団体には文書による意見照会を行うという。たばこ対策推進検討会は、こうした調査結果や事業者の意見も材料に議論を進める。県は検討会から意見を受けた後、最終的な判断を12月に県議会に報告する見通し。条例改正を要する場合、14年度に改正作業を行う。
■現行条例は「不完全」
 医師らでつくる「禁煙、分煙活動を推進する神奈川会議」からは「強化」を求める声が上がる。25日、横浜市内で開いた年次総会では、見直しに関する提言を6月中に黒岩祐治知事宛てに提出することを確認した。提言では、(1)禁煙区域と喫煙区域が扉で隔てられていても、気流を用いて煙が漏れない措置を取るよう施行規則を変更する(2)国の法改正に先行し、企業などの職場における受動喫煙も条例対象とする(3)道路や公園なども条例対象とする−などを盛り込んだ。内科医の中山脩郎会長は「先進的な条例だが、受動喫煙による健康被害をなくすにはまだ不完全。前進させなければならない」と話している。
◆県受動喫煙防止条例
 受動喫煙による県民の健康への悪影響を未然に防ぐことを目的に、学校や病院など公共施設に禁煙、飲食店や宿泊施設などに禁煙か分煙を義務付けている。松沢成文前知事時代に制定・施行された。違反者には個人に2万円以下、施設管理者に5万円以下の過料を設定している。小規模の飲食店(調理場を除く床面積100平方メートル以下)や宿泊施設(700平方メートル以下)は努力義務とし、罰則の対象外となっている。

本記事では,神奈川県において「神奈川県公共的施設における受動喫煙防止条例」の施行状況に基づく検討の取組を紹介.
同検討は,本記事でも紹介されている同条例附則「知事は,施行日から起算して3年を経過するごとに,この条例の施行状況について検討を加え,その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする」との規定に基づくもの.同条例の逐条解釈によると,同種の見直し規定は,「通例では5年である」ものの,「今後の社会状況に応じて受動喫煙防止対策をなお一層推進していく観点」から「施行日から3年ごとに見直しをすること」を規定された,とある.具体的には「本条例の最初の見直し」は「受動喫煙を巡る環境の変化や社会的要請に適切に対応しつつ(立法事実)」,「平成22年4月1日から平成25年3月31日までの施行状況」について「県民,有識者等で構成」される「別に設ける検討組織」で「検討を加えた上で,必要な見直しを行なう」*1こととされている.そして,実際に設置された検討組織が,「神奈川県たばこ対策推進検討会」*2となる.
見直し期間を短期に設定されていることで「漸進」*3的な見直しとなるか,または,短期ゆえに寧ろ急進な見直しとなるか.今後の検討状況は,要経過観察.