福岡県内で昨年9月から今年3月までに飲酒運転で摘発された477人のうち、県飲酒運転撲滅条例で「努力義務」として定められたアルコール依存症の検査の受診者は3人にとどまっていたことが15日、県の調査で分かった。依存症対策の難しさが浮き彫りになった格好で、県は啓発活動の強化を検討している。
 アルコール依存症は飲酒運転を繰り返す要因の一つとされるが、周囲が症状を指摘しても本人が否定することが多く「否認の病」と呼ばれる。このため、昨年9月に全面施行された同条例は全国で初めて、摘発された人に依存症の診断を受ける努力義務を課し、5年以内に2回違反した人は60日以内に受診しなければ5万円以下の過料を科すと定めた。
 県健康増進課が今年5月に調査した結果、昨年9月〜今年3月に摘発され、検査を受けた3人のうち2人がアルコール依存症だったことが判明。2回目の違反者は今年7月末現在で5人。2人が受診済みで、2人は受診期限が来ておらず、1人は期限が過ぎた後も未受診のままという。条例施行時には、努力義務であっても一定数の違反者が受診すると期待されていたが、罰則付きでなければ診断を受ける人がほとんどいないのが現状。同課は「『否認の病』という特性も影響している」と分析し、依存症についての講演会や断酒会の研修を行うとともに「必要な人は医療機関にしっかりとつなげられるよう取り組みを進めたい」としている。
 アルコール依存症に詳しい国立病院機構肥前精神医療センター佐賀県吉野ケ里町)の杠(ゆずりは)岳文院長は「依存症に対する不安や情報不足が根強いことが、受診者の少なさに現れている。関係機関が連携し、職場や地域で周知を進めるべきだ」と話している。

本記事では,福岡県における「福岡県飲酒運転撲滅運動の推進に関する条例」*1の施行状況を紹介.
同条例第8条第1項では,飲酒運転違反者に対して「知事が指定する医療機関においてアルコール依存症に関する診断を受けるよう努めるものとする」との努力義務が規定.また,「5年以内に再度飲酒運転で検挙された場合」,「指定医療機関」で「アルコール依存症に関する診断を受け」「その結果を知事に報告」*2することが求められる.また,同条例第36条により「アルコール依存症に関する受診を行わない者」は「五万円以下の過料に処」せられる.
本記事では,2012年9月から2013年3月真での6ヶ月間で「飲酒運転で摘発された」方が「477人」のうち,実際の「受診者は3人」であったことを紹介.診断と飲酒を比較衡量した場合,飲酒者にとっては「報酬を特定」*3するための「きっかけ」*4が存外容易ではないのかもしれない.悩ましい.

*1:福岡県HP(県政情報県の条例,公報福岡県例規全集)「福岡県飲酒運転撲滅運動の推進に関する条例」(平成二十四年三月二日,福岡県条例第一号)

*2:福岡県HP(防災・防犯とくらし交通安全)「福岡県飲酒運転撲滅運動の推進に関する条例に基づくアルコール依存症に関する診断について

*3:チャールズ・デュヒッグ『習慣の力』(講談社,2013年)361頁

習慣の力 The Power of Habit

習慣の力 The Power of Habit

*4:前掲注3・チャールズ・デュヒッグ2013年:361頁