本日は,同書.昨日の本務校でのオープン・キャンパスのお仕事への往復時に読了.
本書の対象は商店街の衰退.商店街が衰退する/しつつある原因はどこにあるのか.本書は「公務員と商店主」(12頁)に原因をみる.例えば「商店街の衰退は,自治体の補助金ばらまき施策が引き起こした産物」(52頁)と指摘する.これは補助金自体を否定するものではない.むしろ,補助金にともない「自立する,自分で考える」(53頁)ことがないため衰退を起こしたと見るのである.本書は,商店街の再生策は誰かに「任せる」のではなく「利用者が創る」(187)ことを強調する.
また,地方公務員論としても至極面白い.例えば,「商店街活性化」対策として「計画書」(131頁)がしばしば自治体では策定される.しかし,何故,計画の効果がでないのか.本書はその原因に「公務員自身が理論の通りに,行動する意欲が全くない」(131頁)ためであると見る.果たして,商店街の施策や事業に関わる公務員自身は,お昼や夜に商店街を利用しているのだろうか,と問題を投げかける.そのため「隗より始めよ」ではないだろうが,「市役所の職員食堂を廃止して,公務員は昼食と懇親会に商店街を活用しましょう!」(134頁)との指摘は大胆ななかに説得力もある.
なお,政策立案での根拠の重要性は巷間強調される.しかし,本書では,根拠は前提としたうえで,実際に政策を取り組むときには最後は「感情」の重要性を指摘する次の指摘には,なるほどと思いました.

消費は「理論より感情」で決まります.これはマーケティングを少しでも知る者は常識です.しかし,まちおこし地方自治の分野では,この常識が恐ろしいほど欠落していて,アンケート調査や統計など「データだけを絶対的に信頼して,机上で立案した企画」ばかりが採用されるから,ことごとく失敗してしまうのです.」(100頁)