沖縄県竹富町で、同県・石垣島石垣市)にある役場を町内の島に戻そうという動きが出ている。
 市町村の区域外に役場がある自治体は全国的にも珍しく、町長や多くの職員が石垣市で暮らす現状に、「町民の顔が見える行政が本来の姿」との声が上がる一方、「かえって不便になる」などの反対意見も根強い。半世紀にわたる議論を決着させようと、住民投票も検討されている。
 「役場ができれば島の人口が増え、経済発展も期待できる」。役場の移転候補地・西表島(人口約2300人)の観光業、中宗根徹さん(58)は移転を心待ちにしている。竹富町は約40キロ四方に散らばる16の島で構成され、西表島波照間島など九つの有人島で約4000人が暮らす。交通機関は各島と石垣島を結ぶ船便が中心で、まだ村だった1938年、「住民に便利な場所」として、役場は竹富島から石垣島に移された。現在、町職員約130人の約7割は石垣市民で、税金も同市に納める。役場は市有地にあり、町は年間約400万円の使用料を市に払っている。
 63年には西表島への移転計画案が議会で可決され、2002年には町が西表島東部に新庁舎用地を購入した。しかし、現在も船便は石垣島と町内の各島を結ぶ航路が中心で、町内の島間の海上交通手段が十分に整備されていないことなどから、半世紀にわたって移転は実現していない。川満栄長町長(60)は昨年、移転の是非を問う住民投票の実施を公約に掲げて再選。住民説明会や移転基金積み立てを進め、「旧竹富村ができて100年になる14年度には、移転に着手したい」と語る。
 一方、「現状のままでいい」と話すのは竹富島の観光業の男性(36)。日用品の購入などは全て石垣島で済ませており、「移転しても不便になるだけ」と懸念する。イリオモテヤマネコなどが生息し、近海に豊かなサンゴが広がる西表島は、世界自然遺産の登録を目指す「奄美琉球」を代表する島の一つ。同島を拠点とする航路確保に向け、サンゴの移植や浚渫工事も進むが、「自然保護を優先すべきだ」との声も少なくないという。
 川満町長は「このままでは論争が続くばかり。反対住民の意見も聞きながら、自分の任期中に決着させたい」としている。(林宏美

本記事では,竹富町における庁舎移転に関する検討状況を紹介.
本記事で紹介されているように,「沖縄本島から南西に450km」「大小16の島からなる」*1同町では,「役場」を「石垣市」に「位置」*2されており,同町の自らも「特異な行政形態」*3と紹介.なお,「役場本庁舎が行政区域内に無い町村が日本では3つ」*4あり,同町以外には,鹿児島市に役場を置く十島村と三島村*5がある.
1519年から現代まで整理されている「竹富町のあゆみ」と題する年表を確認すると(立派な内容ですね),「普通町村制」が「適用」された1920年には「村役場の庁舎落成」,1925年に「石垣島に村役場出張所」*6を設置されている.その後,1938年に「離島行政を円滑にするため石垣町字登野城に役場移転」*7されたことが区域外庁舎設置の経緯であることが分かる.なお,1945年には「村行政を一時小浜島に移」されたものの,「終戦とともに石垣町所在の役場」*8を再び設置されている.
本記事によると同「町職員約130人の約7割は石垣市民」であること,そして,「役場」は石垣市の市有地」であるため「年間約400万円の使用料」を同市に支払っていることを紹介.なるほど.本庁が区域外設置となった場合,「領域別」*9に設置されている「公共施設」*10の管理運営は,是非訪れてみてお話を伺ってみたい.要確認.

*1:竹富町HP(竹富町について竹富町の紹介)「竹富町へのアクセス

*2:竹富町HP(竹富町例規集)「竹富町役場の位置を変更する条例」(昭和52年3月30日,条例第9号)

*3:前掲注1・竹富町竹富町へのアクセス)

*4:十島村HP(役場の案内 )「庁舎案内

*5:三島村(村の行政)「三島村役場の案内

*6:竹富町HP(竹富町について竹富町の紹介)「竹富町のあゆみ

*7:前掲注6・竹富町竹富町のあゆみ)

*8:前掲注6・竹富町竹富町のあゆみ)

*9:金井利之「空間管理」森田朗編著『行政学の基礎』(岩波書店,1998年)166頁

行政学の基礎

行政学の基礎

*10:竹富町HP(竹富町について竹富町の紹介)「公共施設案内