渋谷区は、来月開会する定例議会に区情報公開条例の改正案を提出する。情報公開請求制度で開示する文書のコピー代を1枚10円から20円に値上げ▽大量の請求で業務に支障があり、「権利の乱用」と認められる場合は請求を却下することができる−−とする内容。住民の「知る権利」との関係から、論議を呼びそうだ。
 区議会は昨年10月、コピー代値上げの検討を求める請願を自民、公明などの賛成多数で採択した。桑原敏武区長は一昨年12月、「個人情報の保護及び情報公開審議会」(会長=園部逸夫最高裁判事)へ情報公開制度の適正な運用について諮問していたが、請願採択を受けて審議内容に追加。今月22日に審議会が出した答申には、値上げを容認する内容も含まれていたという。
 区がコピーにかかる人件費とコピー機器代を試算したところ、1枚当たり27円となったことなどから、「10円から20円の値上げは妥当」と判断。昨年度は1件の請求で約7000枚をコピーしたこともあったという。桑原区長は取材に対し、「特定の個人の請求が多く、一般の人からの請求は少ない。区民の『知る権利』が阻害されることはないと考える」と話した。
 一方、市民団体「渋谷オンブズマン」出身で、情報公開請求に積極的な堀切稔仁(ねんじん)区議(無所属)は「情報は主権者である区民のもので、値上げは言語道断だ。区の予算が適正に使われているかどうかを調査しようと思ったら何千枚になることもある」と区の対応を批判した。
 情報公開請求のコピー代は、23区では「1枚10円」が一般的だが、品川区のようにコピー代(1枚10円)に加え、1件あたり300円の手数料がかかる自治体もある。都はコピー1枚20円のほかに閲覧料(1枚10円、1件最高100円)を課している。【戸上文恵】〔都内版〕

本記事では,渋谷区における情報公開制度の取組を紹介.
2011年11月15日付の本備忘録で記録した,同区における同制度のいゆわる「濫用」*1と目する運用への制度改正方針を紹介.本記事によると,複写代の負担額変更と「「権利の乱用」と認められる場合は請求を却下」される方針の模様.
同区では,渋谷区個人情報保護条例第12条第2項に基づき「公文書の写しの作成及び送付に要する費用」は「公開請求者の負担」とし,同条第3項により「費用の額」は「区長が別に定める」*2こととされている.具体的には,告示となる「渋谷区個人情報保護条例及び渋谷区情報公開条例の規定による文書等の写しの交付を受けた者が負担すべき費用の額」*3に基づき,複写額を公表されている*4
本記事によると「情報公開条例の改正案」を議会に提出し,上記の改正方針を具体的に整備される模様.同告示を改めるのか,または,同条例内の別表等で記載されることになるのだろうか.また,「「権利の乱用」と認められる場合」の具体的な認定手続とあわせて,要確認.

*1:藤原静雄「情報共有の政策法務」北村喜宣・山口道昭・出石稔・礒崎初仁『自治政策法務』(有斐閣,2011年)492頁

自治体政策法務 -- 地域特性に適合した法環境の創造

自治体政策法務 -- 地域特性に適合した法環境の創造

*2:渋谷区HP(渋谷区例規集)「渋谷区情報公開条例」(平成元年九月二五日,条例第三九号)

*3:渋谷区HP(渋谷区例規集)「渋谷区個人情報保護条例及び渋谷区情報公開条例の規定による文書等の写しの交付を受けた者が負担すべき費用の額」(平成一九年二月一日,告示第六号)

*4:同告示によると負担すべき金額は,例えば「文書,図画,写真」を「単色」で「複写機による写し」をした場合,「A三判以下」では「一枚十円」,「A三判を超えてA二判以下」では「一枚二十円」,「A二判を超えてA一判以下」では「一枚四十円」,「A一判を超えてA〇判以下」では「一枚八十円」となる.