復興の防災計画: 巨大災害に向けて

復興の防災計画: 巨大災害に向けて

本日は,同書.先週2013年8月21から23日の相馬市・南相馬市での調査に向かう移動時に読了.
復興は遅れているのか.この問いは,ノーでもあり,イエスでもある.例えば公共インフラ*1では進みつつある.一方,一人ひとりの「復興感」*2では復興という成果が実感できず「遅れ」が指摘される.もちろんそれも個々の自治体での進度や一人ひとりの意識でも異なる.上記の調査では,復興計画を時間管理という観点から観察していると「遅れ」という言葉には敏感になる.復興の過程は,時間軸で議論することは適切なのだろうか,という疑問も常にわく.平時での自治体がたくわえてきた自治体計画の慣行が,復興計画にも根ざし「遅れ」という尺度での考え方に影響しているのではないか.では,そもそも任意設置であるはずの復興計画がなぜ策定されるのだろうか.そのような観点から復興計画を考えている.
東日本大震災の復興の現状からはじまり,復興と防災の理論的な分析,復興計画・防災計画の変遷と策定方法,そして,事前準備の重要性を論じた本書を読むと,下名の素朴な問題を明快に整理してくれる.例えば,本書では「復興計画の策定とは極論すると「納得」のプロセス」(60頁)と断言する.「関係者のさまざまな「想い」を実行可能な形式にまとめていくプロセス」(118頁)でもある.では,復興の時間をどう考えるとよいのか.本書では,震災復興にかかる「長い時間」に備えるためにも,「地域特性にあわせた事前復興」(193頁)を提案する.サンフランシスコ,ニュージランドの事例分析に基づく次の指摘には,「ゆっくり」という視点は全く考えていなかったこともあり,なるほどと思いました.

先進国の復興の特徴はゆっくりと復興を行なうことである.」(42頁)