RePUBLIC 公共空間のリノベーション

RePUBLIC 公共空間のリノベーション

本日は,同書.
まずは,おどろいた.同じ問題関心を持つ方々がいたことにである.2008年12月7日付の本備忘録で項目立てを試みて以来,本備忘録の断続的な観察課題のひとつ「庁舎管理の行政学」では,報道される記事に則して時折思いつき,各自治体での広義の意味での「庁舎管理」の取組を記録.5年間程観察し,少し事例が集積したところもあり,本年度からは少し真面目に「庁舎空間管理」という切り口から研究開始.あわせて,今年度は学生さんとのグループワークや自治体の職員さんとの政策立案研修のテーマでも庁舎を扱わせてもらい,日々庁舎のことを考える機会が増え始めたなかで,昨日,出会った本書
本書の仮説は大胆だ.「すでにある公共空間を少しだけリノベーションすることによって,その使い方,さらには概念までを自然にかえていきたい.小さな変化の集積が,結果的に公共という概念を問い直す流れにつながるのではないか」(13頁),という.そして,公園,役所,水辺,学校,ターミナル,図書館,団地のリノベーションを考える.そして,リノベーションといっても,修繕や増改築を扱っているわけではない.むしろ,上記の仮説にあるように「使い方」のリノベーションに拘っている.この試みが「オフィシャルスペース」(15頁)として独占されている公共空間を,概念ごと変えようとする.野心的でもある.
おどろいたのは,ここ試みに「役所」が含まれていたことである.本書では,こう言う.「役所はその空間構造,立地など見直す余地がたくさんある.同時にそれは可能性を持っていることの裏返しでもある」(65頁),と.なるほど,庁舎という空間を「管理する側の論理ではなく,使う側の論理で再編集してみる」(65頁)のである.全く同感だ.では,どうするか.本書では,構造補強からはじまり,部署の空間配置の再編,カウンターの丸テーブル化,まちづくり部署のマチナカ配置,役所内の託児所配置,議事堂のガラス張りか,1階の開放,食堂の最上階配置と「効率性や画一性より,多様性やコンセンサスの形成の重要性が上回」(65頁)使い方を幾つも提示する.「用事がないと行かない場所から,役所は日常の延長へ」と庁舎空間をどう考えると良いのか.想像力を喚起させてもらえる.上記の学生さんや職員さんにも薦めたくなる,良書.
本書の対象は上記のように,庁舎だけではない.むしろ,本書でも分量を多く記載されている公園や水辺のリノベーションも魅力的である.次の指摘は,幾つもの公共空間への考え方が色濃く出ており,なるほどと思いました.

この本で僕は,一環して公共空間の改革開放路線を提案している.空間は管理する側の論理ではなく,使う側の論理でつくらなければならないと思っているからだ.そのためには,空間の主体を管理者から使用者へ移行しなければならない」(20頁)