• 志田文毅「東日本大震災を教訓とした災害対策関連法制の見直し「第2弾」について〜「災害対策基本法等の一部を改正する法律」及び「大規模災害からの復興に関する法律」の概要〜」『地方財政』(地方財務協会編)第52巻第8号,2013年8月号,50〜85頁.

本日は,同報告.一昨日と昨日のいわき市への聞き取り調査からの帰路,「大規模災害からの復興に関する法律」*1の理解のため.
2013年6月21日から施行された同法では,個人的に注目している制度整備がある.市町村(特定被災市町村)の復興計画作成が法制度化された点である.作成自体は努力義務である.そのため作成の要否を巡る自治的な判断の部分は確保もされた制度化である.これにより,従来,まったくの任意で策定され続けてきた復興計画が,同法に基づき今後は作成される.
本報告を読むと,同法に基づく計画は「インフラ偏重となることはさけなければならない」(71頁)との問題意識から,任意策定の復興計画と東日本大震災特別区域法による復興整備計画を「併せた形で,特定大規模災害に関する枠組みとして制度化した」(71頁)とある.性格としては「市町村における復興のマスタープラン」であり「市街地から農地までの一体的な整備や集落単位での集団移転等被災地域の実態に則した事業を一つの計画に基づいて展開」(71頁)するものである.現在,任意か法定の何れでも計画が叢生している現状のなか,同計画一本で復興事業を営む,復興の総合行政化が期待できそうな計画となる.
一方,法的な保障は復興計画の内容と手続にも及ぶ.例えば,国が定める復興基本方針や都道府県が定める都道府県復興方針「に則」すことが想定される.内容面では,「区域」「目標」はもちろん,「人口の現状及び将来の見通し」や「計画区域における土地利用に関する基本方針」の記載が求められる(第10条第2項).さらに,策定手続面では「あらかじめ,公聴会の開催その他の住民の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする」(第10条第5項).事前統制の手続も法的に担保される.このように,任意でありながらも一定範囲内では事実上は標準化されてきた復興計画が,今後は,法的に内容手続の両面で標準化されていきそうでもある.
ただ,同法に基づき復興計画を作成する場合,上記の通り,第10条第5項では公聴会等の「その他の住民の意見を反映させるために必要な措置を講ずる」ことが要請される.これらの意見反映手続は,平時であれば現在では標準的な手続とである.しかし,そもそも災後に確実な実施が可能であるのだろうか,そして,反映の範囲はどこまでなのだろうかと同法を読んだ際に思った.そのような問題関心から本報告を読むと,次の指摘はなるほどと思いました.

復興法第10条第5項には公聴会の開催が例示されているが,被災地方公共団体においては,それが相当の負担となる場合も想定される.このため,必ずしも公聴会によらなければならないということではく,当該規定の趣旨に留意して説明会や住民アンケート等の方法をとることも考えられる.また,住民意見の中には,実施困難なものや意見が対立しているものもあると想定されるため,そのすべての復興計画への反映を義務付けているわけではないことに,留意が必要である.」(72頁)