総務省有識者検討会(座長・神野直彦東大名誉教授)は22日、都市と地方の税収格差是正の報告書案をまとめた。税収の少ない道府県と市町村のため2014年度から地方税である法人住民税を一部国税化し、地方交付税として再配分する制度の創設を提言。総務省は14年度税制改正での実現を目指す。

本記事では,総務省に設置された検討会における報告書案の内容を紹介.本記事が紹介する2013年10月22日に開催された「有識者検討会」は,「地方法人課税のあり方等に関する検討会」の第15回.同回では,「地方法人課税のあり方等に関する検討会報告書(案)」*1を審議.
同報告書案を確認すると,「偏在性が小さく税収が安定的な地方税体系の構築を図ることが地方税制の最重要課題」*2となる.ただし,本報告書案によると「税源偏在・財政力格差」は「単に人口一人当たり税収等で示される税源の偏在の状況をみるだけ」*3では十分ではないとして,「人口一人当たり税収・一般財源基準財政需要額に対する財源超過額等の割合等」の自治体間の「最大/最小値やジニ係数等の複数の指標を用いて総合的に判断されるべき」*4との考えを示す.
今後,暫定措置であった「地方法人特別税・譲与税を廃止し,事業税に復元」した場合,「現状より財源超過額等で示される税源偏在・財政力格差は拡大し,平成17年度当時の水準に戻る」*5との状況認識を示し,「地方法人特別税・譲与税制度を単に廃止し事業税に復元できるような状況ではない」*6との見解を示す.
加えて,上記の「規範的次元で精緻化」*7された税源偏在・財政力格差に関するアイディアに基づき「何らかの是正措置が必要」*8と問題提起する.ただし,地方法人課税では「法人事業税」に比べると,「法人住民税法人」は「税割の方が税収の年度間の変動が大きく,偏在度も高い税」*9との現状もある.結果,方策としては,「地方法人所得課税」を「今回の地方消費税の税率引上げのように他の偏在性の小さい安定した地方税を充実していくことを前提」としたうえで,「法人の事業活動規模等に即した外形的な基準による課税への移行」や「国税化による地方交付税の原資化を図ることを検討すべき」*10等の内容を同報告書案として提案.
今後は,「法人住民税法人税割の地方交付税原資化」案を「関係者の理解が得られる範囲内」で「検討すべき」*11との方針も示されている.今後の理解の浸透度は,要経過観察.

*1:総務省HP(組織案内研究会等地方法人課税のあり方等に関する検討会)「第15回地方法人課税のあり方等に関する検討会 資料地方法人課税のあり方等に関する検討会報告書(案)

*2:前掲注1・総務省(第15回地方法人課税のあり方等に関する検討会 資料地方法人課税のあり方等に関する検討会報告書(案))6頁

*3:前掲注1・総務省(第15回地方法人課税のあり方等に関する検討会 資料地方法人課税のあり方等に関する検討会報告書(案))11頁

*4:前掲注1・総務省(第15回地方法人課税のあり方等に関する検討会 資料地方法人課税のあり方等に関する検討会報告書(案))12頁

*5:前掲注1・総務省(第15回地方法人課税のあり方等に関する検討会 資料地方法人課税のあり方等に関する検討会報告書(案))14頁

*6:前掲注1・総務省(第15回地方法人課税のあり方等に関する検討会 資料地方法人課税のあり方等に関する検討会報告書(案))24〜25頁

*7:木寺元『地方分権改革の政治学-制度・アイディア・官僚制』(有斐閣,2012年)31頁

地方分権改革の政治学 --制度・アイディア・官僚制

地方分権改革の政治学 --制度・アイディア・官僚制

*8:前掲注1・総務省(第15回地方法人課税のあり方等に関する検討会 資料地方法人課税のあり方等に関する検討会報告書(案))14頁

*9:前掲注1・総務省(第15回地方法人課税のあり方等に関する検討会 資料地方法人課税のあり方等に関する検討会報告書(案))5頁

*10:前掲注1・総務省(第15回地方法人課税のあり方等に関する検討会 資料地方法人課税のあり方等に関する検討会報告書(案))18頁

*11:前掲注1・総務省(第15回地方法人課税のあり方等に関する検討会 資料地方法人課税のあり方等に関する検討会報告書(案))29頁