本日は,同書.卒業研究に取り組む学生さんの研究テーマを考えるうえでの下名自身の勉強用として.著者の本は初めて読みました.
「不特定多数が集まる広場は」「民主主義の大きな要件だ」(50頁).あわせて述べる「日本には広場がなかった」(50頁).では,民主主義の要件を満たしていないのだろうか.くわて「地方ほど,無駄が許容できなくなっている」(28頁)現状もある.広場を新たに設ける許容は既にないのか.さらには民主主義の要件を満たすことができないのだろうか.
そうではない.本書は「新しい広場」(52頁)の可能性を指摘する.では,新しい広場をどこに求めるのか.それは,既に整備されている公共文化施設,特に公共劇場である.広場となるためには新しい役割も必要となる.それは「交流や創造の場」(144頁)である.しかし,制約もある.例えば,地方自治法第244条があるという.公の施設に関する同条項に基づく,住民の利用は自明のことと考えていたため,個々の公の施設の性格を踏まえた,次の指摘にはなるほどと思いました.

過去においては,そういった団体が行政の一部とも癒着して,公共施設を独占的に連続使用するといった自体が普通にあったと聞く.この第244条は,そのような特殊な団体の独占使用を回避するための条文だった.しかし,このことが,結果として地方の公共文化施設の独自の事業や,柔軟性のある貸し出し(たとえば若手の有望なアーティストに優先的に貸し出すといった支援事業)を妨げてきた面があることは否めない」(136〜137頁)