地方分権と教育行政: 少人数学級編制の政策過程

地方分権と教育行政: 少人数学級編制の政策過程

本日は,青木栄一先生よりご恵与賜りました同書.青木栄一先生,誠にありがとうございました.公刊間もない折にご恵送を賜りながらも,大切に読まなければと思い読むための時間を見計らっていたところ,お礼がたいへん遅れてしまいました.心よりお詫び申し上げます.11月の大学祭期間を利用し拝読させて頂きました.まさに,「教育を対象にした研究は面白い」(354頁)ということを体現された一冊と拝察いたしました.

分権改革は教育行政をどのようにかえたのか.そして,その原因はなにか.
分権改革以前,そして,改革後も,教育行政は自立的な政策分野であると巷間言われてきた.「教育ムラ」しかり,「政策共同体」しかりである.では,「政策共同体」としての教育行政は,「政府間関係の紐帯が弛緩」したことで分権改革後も「閉鎖的・同質的」(28頁)であったのか.
この問いへの本書の答えの一つとしては否定をする.それは,政策共同体に対する地方アクターの影響力,特に,首長の影響力行使が観察できるためである.本書の第2部では,山形県志木市犬山市の小規模学級編制の導入とそのインパクトへの分析を通じて,首長が改革主体であったことを実証する.
では,首長は教育行政を「統治するようになったのか」(7頁).つまり,教育の政策共同体は霧散したのか.または,少なくとも共同体の密度は希釈化したのであろうか.そうではない.本書はもう一つの答えとして,分権改革後も持続する政策共同体の頑強さをむしろ明示する.例えば,上記の「小規模学級編成もまずは県費負担教職員制度の存在を前提」としたでの政策選択の帰結であった.これは,分権改革後も「融合型政府間財政関係」のもとで「財政面で中央政府に依存しつ自律的政策選択に着手することが可能」(321頁)となっている.
とどのつまり,財政(制度)が教育行政のみならず,政府間関係を規定するとも推察できる.そのため,政策共同体の本質と述べた次の指摘からは,なるほどと思いました.

教育の政策共同体の本質は,給与負担の共同体だということである」(317頁)