宮城県は18日、東日本大震災津波被災地に残る震災遺構のうち、保存すべき遺構を検討する有識者会議の初会合を県庁で開いた。沿岸15市町へのアンケートに基づき、保存対象になりうる遺構の目安として宮城県南三陸町の防災対策庁舎など8市町の21施設を示した。2014年度末までの予定で検討する。
 会議は研究者や建築家、県内の首長らメンバー9人で構成。村井嘉浩知事はあいさつで「時間がいつまでもあるわけではない。まちづくりが進む中での選考になる。客観的に見て判断してほしい」と求めた。県が示した沿岸市町へのアンケート結果によると、仙台、石巻、塩釜、東松島、女川の5市町は複数の施設を挙げた。名取、亘理など6市町は「なし」と回答。気仙沼市は「検討中」として保留した。
 保存方法の在り方をめぐる議論では、「原則は現地保存」との意見の一方、「残すことに意義がある。移転し保存してもいい」「近寄れない住民に配慮し、デジタル映像化も検討してはどうか」との声も上がった。座長に就任した東北大災害科学国際研究所の平川新所長(歴史資料保存学)は「県全体を見渡して価値があれば、県が示していない遺構も検討する。説得力を持った形で結論を出したい」と述べた。会議は国が保存支援策を示したのを受け、県が設置した。

本記事では,宮城県における「震災遺構」の検討状況を紹介.
復興庁によるいわゆる「震災遺構」の「保存への支援」の「方針」*1という「保存体制の見直し」*2を踏まえて,同県に設置された「宮城県震災遺構有識者会議」*3の第1回の会議内容を紹介.
同会議に提出された同県内での「震災遺構」の現状は次の通りとなる.仙台市では「仙台市立荒浜小学校」と「防災集団移転跡地集落内建物基礎」,石巻市では「石巻市の震災遺構の候補となりうる被災建築物等」,塩竈市は「野々島の津波湾」「浦戸寒風沢の津波石」「野々島崩壊地」,気仙沼市は「気仙沼市東日本大震災伝承検討会議で検討予定」,岩沼市は「高大瀬遺跡の地層」,東松島市は「かんぽの宿 松島」「JR仙石線 野蒜駅プラットフォーム」,山元町は「中浜小学校」,女川町は「旧女川交番」「女川サプリメント(薬局)」「江島共済会館(宿泊施設)」,南三陸町は「防災対策庁舎」*4となる.
「各市町村につき,1箇所まで」」*5の方針からすれば,同会議での資料に基づくと,1市で複数の「震災遺構」もある.一部事務組合や機関の共同設置などで保存の共同処理を行なうこともあるのだろうか.今後の検討状況は,要経過観察.

*1:復興庁HP(広報・報道記者発表資料記者発表資料(平成25年11月15日))「震災遺構の保存に対する支援について

*2:鈴木博之編『復元思想の社会史』(建築資料研究社,2006年)224頁

復元思想の社会史 (建築ライブラリー)

復元思想の社会史 (建築ライブラリー)

*3:宮城県HP(分類でさがす震災・復興震災・復興復興関連情報復興支援)「宮城県震災遺構有識者会議

*4:宮城県HP(分類でさがす震災・復興震災・復興復興関連情報復興支援宮城県震災遺構有識者会議)「資料3震災遺構の現状」(平成25年12月18日,宮城県震災復興・企画部地域復興支援課)

*5:前掲注1・復興庁(震災遺構の保存に対する支援について)1頁