『未来をつくる図書館―ニューヨークからの報告― (岩波新書)』を読んだときのインパクの大きさは忘れられない.同書で紹介されたニューヨーク公共図書館の活動は,資料収集はもちろんビジネス支援と,図書館に漠然もっていたイメージが一新させられたからだ.図書館機能の中核となるレファレンス機能が,まさに地域に根ざしながら人々の活動を支える現実にただただ驚いた.一方で,当時の日本の公立図書館の現状からすれば,羨望でもあった.
 本書は,同書から10年経過したなかでの日本の「公共図書館」の現状を伝える良書(来年度,学生さんと一緒に再読してみたい).本書が紹介する図書館は,武蔵野プレイス,千代田図書館小布施町の「まちとしょテラソ」,鳥取県立図書館,神奈川県立図書館,武雄市図書館と伊万里市民図書館,ふなばし駅前図書館,海士町中央図書館.これらの「公共図書館」では,来館者の「課題解決型」(85頁)の役割を果たしたり,さらには「本の貸し借りによって生まれるコミュニケーションが,人と人をつなぎ,町を作っていく」(217頁).本書を読むとこの10年間で「公共図書館」はまさに「変貌」(15頁)したことがよく分かる.
 恐らくこの10年間で制度的な変化の一つには,指定管理者制度の導入がある.図書館のあり方を考えるうえでは,同制度との関わり方を考えざるを得ない.本書も同制度と図書館の現状と課題を直接,間接的に描く.同制度との関係で,本書を読みなるほどと思った箇所は,次の指摘.

指定管理者制度の是非にかかわらず,図書館はいずれにしても衰退する.直営だろうが,指定管理者だろうが,自治体のガバナンスが非常に重要なのだ」(188頁)