2011年3月11日は,公立図書館も被災した.陸前高田市大槌町,野田村では破滅的状態,大船渡市では骨格のみしか残らなかった.図書館は,時代や国を越えた情報と知識に出会える,ある意味,日常のなかにある非日常的な時空間である.非日常的な震災がおき,図書館がもつ非日常性を飲み込んでしまったのである.
 非日常が日常となった時,おらく優先順は,失われた日常の中の非日常よりも,すこしでも早く,日常の生活を復旧し,復興を目指すことにある.では,図書館は必要ではないのだろうか.そうではない.岩手県内での移動図書館の取組を紹介した本書から,なるほどと思った箇所は,次の指摘.図書館とは日常に回帰する空間でもある.そして,まさに「図書館の仕事は本の貸し出しだけではなく,人々の今はもちろん,未来を創ること,未来を生きることを支える黒子」(152頁)なのだろう.

本を「もらう」のではなく「借りる」ことは,借りたものはきちんと返す,期限という約束を守る,みんなで共通に使うものは大切に扱うという,日常の生活に戻る訓練になる」(69頁)