この時期,来年度の学生さんたちとのグループワークのテーマに悩む.今年度は,庁舎管理という以前からの個人的な関心テーマを扱った.来年度はどうするか.未だ答えは出ない.しかし,候補はいくつかある.その一つが「広場」だ.都心を歩くと空地が思いのほか多くある.しかし,活用はされているのだろうか.また,行き交う人の安全や安心を提供しているのだろうか.漠然とはしているが,そのような視点から考えてみたいなあと思いつつある.
 今朝読んだ本誌.特集のひとつに「欧米の最新デザイン」があった.各レポートのなかでも,ニューヨークの2000年代の都市デザインをレポートする中島直人先生の「ニューヨーク 次々ち「広場」を生み出すニューヨークの都市デザイン」(48〜56頁)は惹きつけられるように読んだ.
 ニューヨークでの「今までになかった小さな広場が次々と生み出されている」(49頁)背景と現在を描く同レポートでは,広場が生み出された近因にブルームバーグ市長の就任と総合計画「PlaNYC」にみる.同計画では「全てのニューヨーカーに徒歩10分以内に公園がある暮らしを提供する」(50頁)という目標が設定した.しかも,毎年度目標達成度が把握されている.その結果,「50以上の広場が生み出された」(55頁)のである.
 なるほど,「近年のニューヨーク市の新たな公共空間の創造は,25の部局が長期的なゴールを見据えて総合的に取り組んでいる「PlaNYC」抜きでは語れない」(50頁)ようだ.また,公共空間の創出は計画だけではないようである.本レポートからは,都市計画局や交通局のリーダーシップ,NPOの実例からも,同市政がとった「能力主義」と「プロ意識の徹底」(51頁)が推進力にもなっていたことが分かる.
 本書でなるほどと思った箇所は,次の指摘.本レポートの中でも特に勉強になったウィリアム・ホワイトにならい,来年度は東京でも考えてみようかなあ.

ニューヨーク市の公共空間は,第一にグローバルな都市間競争の視野の中で,グローバルエリートを惹きつけるセンタリング・ポイントの一つとして,優れたプロフェッショナルに提供されているが,その一方で徹底的にローカルな視点で,地域の人々に新たな居場所を提供しているという事実も重要である」(56頁)