先週から始まった非常勤講師先の大学で,くまモンふなっしーのどちらが好みか尋ねてみた.質問の意図は,いわば民間事業者のふなっしーと「ロイヤリティフリー」*1により,あえて言えば公設民営となる「くまモン」と比較しながら,最近の行政の役割分担をお話するつもりでの質問である.しかしながら,集計すると,くまモンよりもふなっしー派が圧倒的に多い.2013年3月16日付の本備忘録で『くまモンの秘密 地方公務員集団が起こしたサプライズ (幻冬舎新書)』を記録した後,同年5月23日付の本備忘録で記録したようにくまモンの実物を見て触れたもあり,なんとなくくまモン派としては,寂しさも感じる結果に,なかなか講義はやはり準備通りには進まない.
 第1章と第2章では,くまモンプロジェクトの始まりから最近までの動向,そして,第3章以下では蒲島県政の知事就任に至る経緯から県政運営までを描く本書.「最初にくまモンの着ぐるみの中に入ったのは,財務省から出向していた県庁の部長です」(24〜25頁)と,さらりと衝撃的な事実も紹介されており,楽しい一冊.ハーバード大学での講義では,上記のロイヤリティフリー(「楽市楽座の精神」(44頁))がアメリカでは「知的財産権に厳しい国なので,無料で使用してもらうという考え方」は「なかなか理解できなったという点」(90頁)からは,むしろアメリカではふなっしー的展開がより親近感が高いということにもなるだろうか.
 本書でなるほどと思った箇所は,次の指摘.場であれ,空間であれ,民間と行政の相互作用の基点をつくることが行政の役割ということなのだろう.

私はくまモンについて説明する時,「共有空間」という言葉をよく使います.道路を造ったり橋を架けたり,アメリカで言うなら軍隊の基地を造ったりするのが行政や政治の仕事だと思うかもしれません.確かにそれも仕事の一つではありますが,市民の税金を使ってみんなが幸せになる空間を創るのも行政の仕事だと,私は考えています」(92頁)

*1:蒲島郁夫・正木祐輔「くまモンの「ロイヤリティフリー」戦略」『中央公論』2014年4月号中央公論