ヨーロッパ学への招待―地理・歴史・政治からみたヨーロッパ

ヨーロッパ学への招待―地理・歴史・政治からみたヨーロッパ

 久邇良子先生よりご恵与賜りました.誠にありがとうございました.久邇先生は,「序章3 現代のヨーロッパ」,「第3部欧州連合」の「第1章 欧州統合の様相ー拡大と深化ー」「第2章EU統治の仕組み」「第3章欧州債務危機EU」を御寄稿されております.
 「市民のもっとも身近な地方政府の関与」(212頁)策としての地域委員会での諮問を中心とした権限配分とそのゆえの限界,さらには,権限強化への動向を通じて,多層的なガバナンスの設計とは,国内はもちろん,国際間でのなお一層の難しさを考えさせていただきました.また,欧州議会の選挙結果では,1979年以降の7回の選挙を繰り返すたびに投票率が低くなっている現状を踏まえて論述された,次の箇所はなるほどと思いました.

欧州議会の権限も次第に強化され,今やEU予算の約半分,また立法のほとんどに欧州議会の承認が必要になっている.それにもかかわらず,欧州レベルの議会は,肝心の域内市民にとっては逆にますます疎遠な存在となり,欧州議会選挙は,各国政権に対する信任投票の色彩が強くなり,引く投票率の下,投票動機の強い極右などの異議申し立て政党が勢力を伸ばすという皮肉な結果をもたらしている」(203〜204頁)