横浜市は、消防法違反の施設名を独自基準で公表する制度を10月から導入する準備を進めている。全自治体に導入を通知していた総務省消防庁の呼び掛けに応じた形だが、市は公表施設の対象範囲と違反事項について、国基準よりも厳密な内容とする方針。
 開会中の市会定例会に市火災予防条例の一部改正案を提案しており、可決後に規則で公表対象の施設などを具体的に定める。2012年5月に宿泊客7人が死亡した広島県福山市のホテル火災を受け、消防庁は昨年12月に都道府県を通じて全自治体に違反施設の公表制度を導入するよう通知した。消防庁は公表対象をホテルや百貨店、病院など不特定多数が出入りする施設と設定。屋内消火栓、スプリンクラー、自動火災報知機が未設置で、通知後に一定期間が過ぎても改善されなければ施設名を公表するよう求めていた。横浜市消防局は、消防庁の通知よりも公表対象を広げ、工場や事務所、ビルなども加える方針。また、違反内容についても、消火設備の未設置だけではなく、設置されていても維持管理が不適切な場合は対象とする。立ち入り検査で違反を確認し、当該施設に通知後、14日が経過しても改善されない場合に公表する考え。
 市消防局査察課によると、市独自の対象に該当するのは約8万4千施設あり、今年3月末時点で違反状態は67施設ある。現行でも、消防法に基づく是正命令を出せば施設名が公表されるが、命令には時間がかかるという。同課は「利用者や周辺住民に違反の事実を速やかに知らせる必要がある。空白期間をなくしたい」と話す。また、公表制度の導入に合わせ、市は一定の防火基準を満たしたホテルや旅館に「適マーク」を掲示してもらう新制度を10月から運用する。6月13日まで交付申請を受け付けており、消防局の審査、判定を経て「適マーク」を交付する。

本記事では,横浜市における消防法違反対象物への公表制度の取組を紹介.
総務省消防庁では,2013年12月19日に通知「違反対象物に係る公表制度の実施について(通知)」*1を発出.同通知によると,現行の「消防法令の規定」に基づき,「消防機関が命令を行った場合」には「違反対象物への命令内容の公示が義務づけられている」ものの,「公示に至るまでの間」「建物の危険性に関する情報が利用者に提供されない状況にある」ことから,「利用者自らが建物の情報を入手して利用を判断できることが必要」と判断し,「消防法令に重大な違反のある防火対象物」の「違反内容等を公表する制度を開始」*2を求めている.特に同通知では,「都市部における建物の利用者数等による火災危険性に鑑み」「まずは政令指定都市の消防本部を中心として実施されるようお願い」*3がなされている.同通知が想定する対象施設は,消防法施行令の別表1に規定されている施設のうち主なものは以下通り.

本記事によると,同市では上記の「消防庁の通知よりも公表対象を広げ」,「約8万4千施設」ある「工場や事務所,ビルなども加える」,いわゆる「横だし」*4の方針を採用される,という.量的に増加する対象施設への「立ち入り検査」の実施状況は,要確認.

*1:総務省HP(消防庁消防防災関係者の方へ消防関係法令通知・通達平成25年一覧12月の通知・通達について)「違反対象物に係る公表制度の実施について(通知)」(消防予第484号 平成25年12月19日)

*2:前掲注1・総務省(違反対象物に係る公表制度の実施について(通知))

*3:前掲注1・総務省(違反対象物に係る公表制度の実施について(通知))

*4:北村喜宣『環境法第2版』(弘文堂,2013年)91頁

環境法 第2版

環境法 第2版