埼玉県所沢市で、航空自衛隊入間基地(同県狭山、入間両市)の騒音対策を施し「防音校舎」にした市立小中学校二十八校へのエアコン設置の賛否を問う住民投票が八日、告示される。市民の署名を集めて投票にこぎつけた保護者らは「エアコンがなければ夏場に窓を閉められず、騒音で勉強に集中できない」と訴えるが、藤本正人市長(53)は市の財政難などを理由に「不要だ」と主張する。投開票は十五日。双方とも告示前から街頭に立ち、支持を求めて声をからしている。(服部展和)
◆保護者「騒音、窓開けられぬ」
 「自衛隊機の騒音で子どもたちが苦しんでいる現実を受け止めてほしい」。エアコン設置を求める保護者ら約十人が五日、所沢市西武池袋線小手指駅前に立って声を張り上げた。入間基地の約二キロ南東にある所沢市立狭山ケ丘中学校。女子生徒は「五月から九月ごろまでは暑いので授業中は教室の窓を開ける。飛行機が校舎の上に来ると『キーン』と耳をつんざく音が響いて、先生の声も聞こえなくなる」と話す。市は二〇一二年九月の同校の航空機騒音測定で、多くの人が騒がしいと感じる七〇デシベル以上は一日平均二十一秒あったと発表した。しかし、その後、保護者らが専門家に依頼して測定すると、八分十八秒と大きな隔たりがあった。
 駅前に立った保護者の一人、関原明子さん(45)はエアコン設置中止が決まった当時、次男が狭山ケ丘中に通っていた。同校PTA副会長だった関原さんは他の保護者たちと設置を求める活動をスタート。だが市長が応じなかったため昨年九月、住民投票の直接請求に必要な署名活動を始めた。法定署名数(有資格者総数の五十分の一)を上回る八千四百三十人分の署名を集め、住民投票が行われることになった。関原さんらが一二年八月に四階の教室で気温を測ったところ、窓を開けて扇風機も回しているのに最高で三六・八度に達した。関原さんは「夏に窓を閉めたら四〇度を超えるのは確実。騒音がひどいのに防音用の窓を閉められないのは矛盾している」と力を込めた。
 エアコン設置の賛否を問う住民投票 埼玉県所沢市立小中学校28校へのエアコン設置の賛否を問うため、保護者らは2014年11月に住民投票条例制定を直接請求し、市議会は同12月、保護者作成の条例案に「投票結果の尊重」の項目を加えた修正案を可決。賛否の票数の多い方が有資格者総数の3分の1以上になった場合、市長と市議会は「結果の重みを斟酌(しんしゃく)しなければならない」と規定した。有資格者総数は約28万人、開票結果は15日夜に判明する見込み。
◆市長「財政難、優先順低い」
 「市としては、クーラー設置より他にやるべきことがたくさんあります!」「投票では反対に○を!」。藤本市長は自身の主張を書いたチラシを自費で約十万枚作り、一月から市内全家庭に配り始めた。平日はほぼ毎朝、登庁前に駅前に立って通勤客らに設置反対を訴えている。二〇一一年に初当選。所沢市は市立小中四十七校のうち、窓を二重サッシなどにした防音校舎にエアコンを設置する計画だったが、市長は一二年三月、一三年度に予定していた狭山ケ丘中への設置中止を発表。設置済みの一校を除き、狭山ケ丘中など二十八校への設置が取りやめになった。
 当時の会見で、東日本大震災東京電力福島第一原発事故が起きたのを受け「今は我慢が必要だ。子どもたちは分かってくれるはずだ」などと理解を求めた。自衛隊機の騒音を指摘してエアコン設置を求める保護者らに「狭山ケ丘中の教室の騒音レベルを測定したが、授業に支障が出るほどの値ではなかった」と真っ向から反論。「夏休みを除いて気温が三〇度を超えるのは十日間ぐらい。知恵と工夫で乗り切ってほしい」と求める。二十八校のエアコン設置費用は計約七十八億円で、国費を除く市の負担は約三十億円の見通し。市長は六日、本紙の取材に「市財政は厳しく、教育行政の中でエアコン設置の優先順位は低い。老朽化した学校トイレの改修など他にやるべきことがある」とあらためて強調した。
<エアコン設置の賛否を問う住民投票> 埼玉県所沢市立小中学校28校へのエアコン設置の賛否を問うため、保護者らは2014年11月に住民投票条例制定を直接請求し、市議会は同12月、保護者作成の条例案に「投票結果の尊重」の項目を加えた修正案を可決。賛否の票数の多い方が有資格者総数の3分の1以上になった場合、市長と市議会は「結果の重みを斟酌(しんしゃく)しなければならない」と規定した。有資格者総数は約28万人、開票結果は15日夜に判明する見込み。

本記事では,所沢市における住民投票の実施の告示を紹介.
同市では,2006年に「防音校舎に冷房設備を整備する方針」*1.を策定.その後,2011年に「防音校舎への冷房設備の整備について方針を変更」し「冷房設備を整備しないことと」*2,2014年11月に「条例制定請求書」が提出.同年12月「18日」に同市議会にて,「防音校舎の除湿工事(冷房工事)の計画的な実施に関する住民投票」」*3が「修正可決」*4されている.
同条例では,同「市内防音校舎29校」に「冷房設備を防衛省の補助を受けながら順次導入していく」ことの「賛否」を「住民投票で決定」*5する.そのため,「冷房設備の整備を求めるものでは」*6ない.本記事では,2015年「2月15日(日曜)午前7時から午後8時まで」が投票日となる「防音校舎の除湿工事(冷房工事)の計画的な実施に関する住民投票」が同年同月8日に「公示」*7されたことを紹介.
同条例第11条では,「市長および市議会は住民投票の結果を尊重しなければならない.この場合において,投票した者の賛否いずれか過半数の結果が投票資格者総数の3分の1以上に達したときは,その結果の重みを斟酌しなければならない」*8と規定されている.「最終決定権限は行政にある」*9ものの,投票結果は,要確認.

*1:所沢市HP(くらし市民参加・コミュニティ選挙住民投票の実施について)「防音校舎の除湿工事(冷房工事)の計画的な実施に関する住民投票を実施します

*2:前掲注1・所沢市(防音校舎の除湿工事(冷房工事)の計画的な実施に関する住民投票を実施します)

*3:所沢市HP(くらし市民参加・コミュニティ選挙住民投票の実施について防音校舎の除湿工事(冷房工事)の計画的な実施に関する住民投票を実施します)「防音校舎の除湿工事(冷房工事)の計画的な実施に関する住民投票条例

*4:所沢市HP(くらし市民参加・コミュニティ選挙住民投票の実施について)「住民投票実施の経緯をお知らせします

*5:前掲注1・所沢市(防音校舎の除湿工事(冷房工事)の計画的な実施に関する住民投票を実施します)

*6:前掲注1・所沢市(防音校舎の除湿工事(冷房工事)の計画的な実施に関する住民投票を実施します)

*7:所沢市HP(くらし市民参加・コミュニティ選挙住民投票の実施について)「住民投票の期日等についてお知らせします

*8:前掲注3・所沢市(防音校舎の除湿工事(冷房工事)の計画的な実施に関する住民投票条例)

*9:北村喜宣『環境法第2版』(弘文堂,2013年)106頁

環境法 第2版

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