◇商業施設設置には市の許可必要も、県は手続きせず
奈良県庁(奈良市登大路町)1階にあるコンビニエンスストアが都市計画法上の建築許可を受けていないとして、奈良市が県に「法令違反の可能性がある」と指摘していることが分かった。市中心部の県庁がある地区は、開発を制限する都市計画法の市街化調整区域。商業施設の設置には市の許可が必要だが、県は「職員の福利厚生施設」として手続きをしていなかった。県は「市と対応を協議したい」としている。
県は地下1階にあった職員向け売店を移転する際にコンビニを公募。大手のセブン−イレブンの出店が決まり、昨年3月、目抜き通りの国道369号に面した県庁1階にオープンした。市街化調整区域で店舗を新設する場合、規模や周辺への影響、駐車場の確保状況などについて市の審査を受け、許可を得る必要がある。県や市によると、県は事前に市と協議した際、「職員の福利厚生施設。閉庁日も県警職員などが利用する」と説明し、市も許可は不要と判断した。コンビニは年中無休で午前7時〜午後10時に営業し、酒類も販売。軽食を楽しめるカフェも併設している。奈良公園や興福寺、東大寺、春日大社などに近く、特に週末は観光客の利用が圧倒的に多い。こうした実態に、奈良市議会から「違法ではないか」との声が上がり、市は昨年12月に「事前の説明と実際の運用が異なる」と県に申し入れた。仲川げん市長は市議会答弁で「福利厚生施設という用途から逸脱している恐れがある。法令違反となれば是正を求める」と発言。市側は改めて許可を取るか、営業時間を変更するなどの対応策を県と協議する方針だ。来年4月までに県庁6階にオープンする予定のレストランについても、県は「職員食堂のリニューアル」と位置づけているが、同様に許可が必要になる可能性がある。荒井正吾知事は「問題があれば市と協議して適正に対処したい」としている。【宮本翔平】
◇市街化調整区域
無秩序な市街地の開発を防ぐ目的で、都市計画法で規定された都市計画の区分。道路整備や店舗の進出など市街化を積極的に進める「市街化区域」に対し、自然環境を守り、市街化を抑制すべき区域として新たな開発や建築が制限される。立地基準に適合し、許可を得なければ開発などはできない。
本記事では,奈良県における庁舎内のカフェとコンビニ開設後の状況を紹介.
2012年12月7日付の本備忘録では,同県庁における両店舗の設置の予定を記録.その後,2014年3月には「県庁東棟を奈良公園の観光交流拠点とするため整備」の一環として,「奈良公園を訪れた観光客が休憩でき」,「周遊の拠点となる場所」として「県庁東棟1階に「コンビニエンスストア」と「カフェ」が「開設」*1されている.他方,本記事からは,同「県庁がある地区」は「都市計画法の市街化調整区域」であるため,「商業施設の設置には市の許可が必要」とされ,同県庁が設置されている「奈良市」からは,同県に対して,「法令違反の可能性がある」と,「市街化調整区域における開発行為の積極要件」*2に抵触するおそれがあることを報道.
現在,同県HPでは,両店舗に関しては,「職員の福利厚生の充実を図るとともに,来庁者の方にも利用していただきやすいようにトイレや授乳室も完備」*3と紹介されており,本記事にも紹介されているように,原則は職員の福利厚生におきつつも,「多様な範囲」*4での利用も想定されている模様.今後の同市と同県との協議過程は,要観察.
*1:奈良県HP( 県の組織:総務部知事公室:広報広聴課:広報誌「県民だより奈良」:バックナンバー:2月号)「県政スポット」
*2:碓井光明『都市行政法精義Ⅰ』(信山社,2013年)210頁
*3:奈良県HP( 県の組織:県土マネジメント部 まちづくり推進局:奈良公園室)「コンビニ・カフェ」
*4:松井望「行政財産使用の選択 〜目的外使用の許可制度と貸付制度」小島卓弥編著『ここまでできる実践公共ファシリティマネジメント』(学陽書房,2014年)255頁