大阪市を廃止して5つの特別区に分割する「大阪都構想」の是非を問う住民投票が17日投開票され、反対70万5585票、賛成69万4844票の僅差で否決された。これにより大阪市の存続が決まった。都構想を推進した橋下徹市長(維新の党最高顧問)は記者会見で、今年12月までの市長任期を全うした上で政界を引退すると表明。憲法改正を目指す安倍政権の戦略や野党再編の行方にも影響が及びそうだ。
 橋下氏は投票結果を受けて会見し「重く受け止めている。しっかり説明できなかった僕の力不足だ」と敗因を述べた。さらに「市長の任期はやりますが、それ以降は政治家をやりません」と明言した。維新の党の江田憲司代表は18日未明、「橋下氏を引退に追い込んでしまった。しっかりけじめをつけたい」と語り、党代表を辞任する意向を表明した。松野頼久幹事長は同党執行部が総退陣し、近く代表選を実施すると明らかにした。維新の弱体化は安倍政権の政権運営にも影を落とす。今国会での成立を目指す安全保障法制や2016年夏の参院選後の発議を目指す憲法改正で、首相官邸は維新の協力に期待。改憲などに慎重な公明党をけん制するカードに維新を使ってきたが、こうした戦略も軌道修正を迫られる。
 大阪市選管によると、住民投票投票率は66.83%となり、大阪府知事選との「ダブル選」となった11年の市長選を5.91ポイント上回った。当日有権者数は210万4076人で、これまでの住民投票で最多だった。
 都構想は新設する5つの特別区が医療・福祉や小中学校教育など身近なサービスの提供に特化し、インフラ整備など広域行政を大阪府に一元化する内容。各区に公選制の区長・区議を置き、府と特別区は「東京都と23特別区」と同様の関係になるとしていた。橋下氏が代表を務める地域政党大阪維新の会」が、府市の二重行政の解消が必要だとして提唱した。自民、公明、民主、共産各党の地方組織は移行コストが多額に上ることや住民サービスが低下する恐れがあることを理由に反対を訴えた。自民党大阪府連の竹本直一会長(衆院議員)は17日夜、「わずかの差で勝つことができた。住民の皆さんに理解を得た」と述べた。
 今回の住民投票は、賛成多数の場合、政令指定都市大阪市が1956年の制度創設以来初めて廃止される予定だったことから、投票結果は、大都市制度のあり方を巡る他地域での議論に一石を投じる可能性があるとして注目されていた。

本記事では,大阪市における特別区設置に関する住民投票の結果を紹介.
「投票の開票結果」では.賛成が694,844票,反対が705,585*1.各行政区毎の開票結果を,「特別区設置協定書」に基づく5つの「区域」*2毎で確認してみると,次の通り.北区と中央区では,特別区の設置への賛成が多く,湾岸区,東区,南区は反対が多い.

行政区 賛成 反対 特別区 賛成 反対
北区 36,019 25,001 北区 179,694 149,182
都島区 30,135 26,671
淀川区 48,566 38,903
東淀川区 43,388 41,340
福島区 21,586 17,267
行政区 賛成 反対 特別区 賛成 反対
此花区 17,597 18,872 湾岸区 79,323 91,771
港区 21,410 23,351
大正区 16,646 21,211
西淀川区 23,670 28,337

住之江区分は町名毎の得票率が把握できないため,「南区」に算入

行政区 賛成 反対 特別区 賛成 反対
城東区 46,728 45,784 東区 145,817 153,441
東成区 20,689 20,667
生野区 25,396 29,190
旭区 23,145 28,048
鶴見区 29,859 29,752
行政区 賛成 反対 特別区 賛成 反対
平野区 46,072 56,959 南区 182,392 209,577
阿倍野区 30,434 32,446
住吉区 38,623 45,950
東住吉区 34,079 37,322
住之江区 33,184 36,880
行政区 賛成 反対 特別区 賛成 反対
西成区 25,298 28,813 中央区 107,618 101,634
中央区 24,336 20,657
西区 26,094 19,160
天王寺区 18,327 20,815
浪速区 13,563 12,189

「それぞれの都市・地域が,その都市・地域の実情ににあわせて自ら選択できるような仕組み」*3に向けた今後の検討状況は,要観察.