川崎市の福田紀彦市長が市議会に提出した「特別秘書」の設置条例案について、議会総務委員会は二十六日、全会一致で否決した。昨年一度は取り下げながら再び提案したこだわりの条例案だったが「職務内容が不透明」「報酬が高額」などと批判が噴出。七月二日の本会議でも否決の公算が大きい。市長提案の条例案が否決されれば一九七四年以来となる。 (横井武昭)
 市長は、昨年九月議会に条例案を提出予定だったが、否決の公算が大きく見送った。今回、「(議員の)改選後初の定例会がふさわしいタイミング」として再び提案した。しかし二十四、二十五日の代表質問では、各会派から職務内容の説明を求める声が相次ぎ、市長は「国や県関係者から必要な情報を収集し、政財界の方々との面会を調整する」などと説明、「選挙活動などへの従事禁止を定め、私が責任を持って把握する」と、設置に理解を求めた。
 二十六日の総務委員会でも各会派から「なぜ必要なのか、代表質問でも答弁になっていない」と再び批判が続出。浅野文直議員(自民)は「国との連絡は必要だが、特別職の副市長三人がいて賄えないのか」と疑問を呈した。また花輪孝一議員(公明)は「他都市と比較して多額な経費がいる」と指摘。雨笠裕治議員(民主みらい)は「どう市民の役に立つか明示されていない」と述べ、市古映美議員(共産)は「承認しろと言われても市民に説明できない」と切り捨てた。結局、各会派が反対でまとまり、採決で賛成者が一人も出なかった。
 特別秘書の人選が市長の専権事項となることも議会の反発を強めた。市長は具体名を挙げていないが、市長に近い人物の名前が取りざたされ、総務委員会では「選挙の論功行賞にならないか」と、ただされる一幕も。市長の悲願の条例案だが暗礁に乗り上げた格好だ。
 <川崎市の特別秘書の設置条例案> 市長の政務を補佐する特別職の秘書を設置する案。定数は2人以内。任期は1年。市長が任命し再任可。月給は部長級の上限61万円。ボーナスなどを含めた年収は約1100万円になるという。首長の特別秘書は、東京都や神奈川県、さいたま市などが任用している。

本記事では,川崎市における特別秘書の設置に関する条例案への同市議会での審議過程を紹介.
2014年8月27日付及び2015年6月10日付の両本備忘録で記録した同市における特別秘書の設置の条例案.同年「6月15日」に同市議会に「提出」*1.「トップマネジメントが求められている時期にあって,これからさらに行政 を円滑に運営していくために,スタッフ職の充実が必要」*2との認識から,特別職としての設置が想定された同職.「定数は,2人以内」(指定条例第3条),任期は「1年」,「ただし,再任を妨げない」*3(指定条例第4条)ことを規定.給与は「月額610,000円を越えない範囲内で市長が定め」(給与・旅費条例第3条),「地域手当,通勤手当,期末手当及び退職金」*4(給与・旅費条例第2条)も支給される.
本記事では,同条例案に対する同市議会「総務委員会」*5において,「職務内容」「報酬」「人選」等に関する審議状況を紹介.加えて,「本会議でも否決の公算が大きい」との見立てが示されている.同市における「首長ブレーン」*6の制度化の審議過程は,要経過観察.