東京都世田谷区は29日、同性カップルの宣誓を認める公的書類を発行すると定めた要綱案を区議会に報告した。要綱案には区の発行する書類の具体的な効力は明記されていないが、公的機関が同性カップルを承認する制度が広がることで、性的少数者(LGBT)への偏見や不利益の解消が進むことが期待される。区は11月をめどに書類を発行する方針。
 要綱案によると、同性カップルが区にパートナーであることを宣誓し、区が押印した宣誓書の写しと、受領の証書を交付する。宣誓するには、双方が二十歳以上で区内に居住するか、一方が区内に住み、もう一方が転入を予定していることなどが条件。区が十年間、宣誓書を保管する。
 要綱は、自治体の事務の目的や手順を示したもので、条例のように議会の議決は必要ない。首長の権限で策定できる。性的少数者は賃貸住宅の入居や病院の面会などで、戸籍上の家族ではないことを理由に断られるといった不利益があり、世田谷区はこうした差別の解消を目的に要綱案を示した。
 今年四月には、同性カップルを結婚に相当する関係と認めて「パートナーシップ証明書」を発行する渋谷区の条例が施行し、区は十月末をめどに証明書の発行を目指している。この条例は法的拘束力はないものの、事業者に公平・適切な対応を求めており、差別的な行為をした場合は事業者名を公表する規定も盛り込まれている。
 渋谷区の条例では、双方が互いの後見人となる契約を結ぶことが必要で、公証役場での手続きや費用が発生する。
 一方、世田谷区の要綱案は渋谷区のような規定はないが、二人がパートナーシップを宣誓すれば、公的書類の交付を手軽に受けることができる。この日開かれた区議会区民生活常任委員会では、区議が「宣誓書を見せれば、事業者が対応をするといった具体的効果を考えなければ理念にとどまるのでは」と質問。区側は「性的少数者基礎自治体が向き合い、啓発の第一歩となることに意味がある」と要綱の意義を強調した。
 <LGBT> レズビアン(女性同性愛者)、ゲイ(男性同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー(体と心の不一致)の頭文字を取った性的少数者への総称。今年4月、電通ダイバーシティ・ラボが日本の成人約7万人を対象にした調査では、7・6%がLGBTに該当すると答えた。

本記事では,世田谷区における証明書の取組を紹介.
2015年2月13日付の本備忘録では,渋谷区における開始された同取組を記録.その後,「パートナーシップに関する証明」の発行ができることを規定した,「渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」*1を制定し,2015年4月1日から施行されている.同証明に際しては,「当事者双方」が「相互に相手方当事者を任意後見契約に関する法律」の「第2条第3号に規定する任意後見受任者の一人とする任意後見契約に係る公正証書を作成」し「登記を行」うこと,そして「共同生活を営むに当たり」「当事者間」で「区規則で定める事項についての合意契約が公正証書により交わされていること」(同条例第10条第2項)となる.
他方,本記事では,同区では区議会に対して要綱案が説明されたことを紹介.本記事によると,同要綱案は「同性カップルが区にパートナーであることを宣誓」することで「区が押印した宣誓書の写しと,受領の証書を交付」する手続が規定されている模様.「政策波及」*2による制度化の帰結は,要観察.

*1:渋谷区HP(区政情報施策・計画・取り組み条例・答申渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例)「渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例

*2:秋吉貴雄,伊藤修一郎,北山俊哉『公共政策学の基礎』(有斐閣,2010年),250頁

公共政策学の基礎 (有斐閣ブックス)

公共政策学の基礎 (有斐閣ブックス)