寄付を通じて自治体を応援する「ふるさと納税制度」で、昨年一年間に県内市町村から推計で約五億円が他の自治体に流出していたことが、県のまとめで分かった。特に横浜市は流出が著しい。返礼品といわれる景品を目当てにした寄付が全国的に加速する中、県内でも影響が広がっている。 (原昌志)
 ふるさと納税は、任意の自治体に寄付すると、居住地の住民税などが一定の上限まで控除される仕組み。住民税の一部を他の自治体に付け替える形だ。二千円は控除されず自己負担となるが、それ以上の金額相当の返礼品がもらえるケースがあり、年々関心が高まっている。
 県市町村課によると、昨年中に県内三十三市町村が同制度で受け入れた寄付額は約六億円。これに対し、県民が居住地以外の自治体に寄付したのは約十一億円だった。正確な統計ではないが、差し引き約五億円が、居住市町村から流出していることになるという。
 全国の自治体では寄付した人に、和牛や海産物をはじめ、パソコンや炊飯ジャーといった家電製品まで、さまざまな品を贈る例がある。今年四月からは控除額の上限が引き上げられたこともあり、県は「この一、二年で急速にブームになっている。このままではマイナスが拡大するおそれがある」と懸念している。
 こうしたことを背景に、県内では今月一日現在、十八市町が返礼品を導入。横須賀、鎌倉、小田原市など六市町は本年度から参入した。横須賀市は六月からの三カ月で、年間目標の一千万円を達成した。
 二〇一二年度から特産品の三崎まぐろなどを贈っている三浦市は昨年度、全国から一億五千八百二十万円の寄付を集めた。本年度も八月末時点で、前年同時期を上回る四千五百七十三万円が寄せられている。返礼品の費用をかけても七割程度が市の収入になっているといい、担当者は「市外に寄付する人もいるが、収入のほうが大きい。市の宣伝にもなっている」と語る。
 一方、返礼品を出していない横浜市ふるさと納税によって控除した住民税の減収は、昨年分で五億七千万円に上る。逆に昨年度に受け付けた寄付は、企業を含めた全体で六千四百万円にとどまる。単純計算で、流出は五億円以上になる。市財源課の担当者は「おみやげだけが寄付を募る手段ではない。文化や教育振興など市の取り組みを知って協力してもらえるようPRをしたい」としている。
 返礼品競争の過熱に対しては、総務省が今年四月、高額の返礼品の自粛などを各自治体に通知している。
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 住民税には個人県民税もあり、県の税収減も生じている。県財政課などによると、一三年度に県が受けたふるさと納税の対象になる寄付は六千三百二十五万円で、控除による減収額は二億二千五百九十三万円。一四年度はさらに流出が加速しているとみられる。黒岩祐治知事は六月定例県議会で「感謝の気持ちをしっかりと表し、神奈川のファンを増やしながら、寄付につなげていきたい」との方針を示しているが、具体的な検討は進んでいない。
 <ふるさと納税> 故郷や応援したい自治体(都道府県・市区町村)に寄付すると、2000円を超える額が、一定の上限まで所得税と住民税から控除される制度。都市部と地方の税収格差を縮小させる狙いもあり、2008年に始まった。今年4月からは控除額の上限が引き上げられ、たとえば年収500万円の独身者の場合の目安では、年間6万7000円まで控除される。また年間5自治体までなら確定申告が不要な「ワンストップ特例制度」も始まった。

本記事では,神奈川県に位置する市町村及び同県におけるふるさと納税制度の結果を紹介.
同県では,2015年「8月末」現在「合計396件7,400万円の寄附」*1があった同制度.本記事によると,2013年度の「控除による減収額」は「2億2593万円」であった模様.加えて,同記事では,横浜市における「ふるさと納税*2による「減収額」も紹介.寄附は,2014年度は「6,400万円」,他方「住民税の減収」は「5億7,000万円」であった模様.住民税もまた「競争的資金」*3となり,同制度による減収額が分かる同記事.今後の「財源の調達」*4方法は,要観察

*1:神奈川県HP(電子県庁・県政運営・県勢財政・経理税制・県税)「かながわキンタロウ寄附金(ふるさと納税)

*2:横浜市HP(組織財政局)「横浜サポーターズ寄附金 〜ふるさと納税〜

*3:山下祐介・金井利之『地方創生の正体』(筑摩書房,2015年)203頁

地方創生の正体: なぜ地域政策は失敗するのか (ちくま新書)

地方創生の正体: なぜ地域政策は失敗するのか (ちくま新書)

*4:前掲注3・山下祐介・金井利之2015年:203頁