政府の地方制度調査会(首相の諮問機関)は29日、人口減少社会に対応する地方行政のあり方に関する答申をまとめた。首長らの違法な公金支出に賠償を求める住民訴訟制度の機能強化や監査制度の基準統一などが柱。安倍晋三首相に近く提出する。政府は答申を踏まえた地方自治法改正案を、秋の臨時国会以降に提出を目指す。
 住民訴訟の係争中に議会が首長の賠償を放棄することを禁止するよう求めた。議会で首長の賠償免除を議決し、裁判所が違法性を判断せずに訴えを退ける例が出ていることに対応する。人口減で税収の伸びが期待できない中、違法な支出の監視を強める。監査制度では委員が不適切な財務処理を発見した際、必要に応じて自治体に是正勧告ができるようにすることも求めた。

本記事では,地方制度調査会における答申案を紹介.
2016年2月29日に開催された第3回総会に提出された同答申案.本記事でも紹介されている通り,まず住民訴訟に関しては,「不適正な事務処理の抑止効果を高めるとともに,長や職員の損害賠償責任については,長や職員への萎縮効果を低減させるため,軽過失の場合における損害賠償責任の長や職員個人への追及のあり方を見直すことが必要」*1と提案する.
あわせて,「四号訴訟の訴訟係属中又は請求等を命ずる判決が確定した後」,自治体が「債権の放棄や和解を行うことができるか」*2という論点に対しては,2009年6月16日に提出された第29次の同調査会の答申において,「4号訴訟で紛争の対象となっている損害賠償又は不当利得返還の請求権を当該訴訟の係属中に放棄することは,住民に対し裁判所への出訴を認めた住民訴訟制度の趣旨を損なうこととなりかねない」とし「4号訴訟の係属中は,当該訴訟で紛争の対象となっている損害賠償又は不当利得返還の請求権の放棄を制限するような措置を講ずるべきである」*3との提案に引き続き,第31次答申案においても「不適正な事務処理の抑止効果を維持するため,裁判所により財務会計行為の違法性や注意義務違反の有無が確認されるための工夫や,4号訴訟の対象となる損害賠償請求権の訴訟係属中の放棄を禁止することが必要」*4との見解が示されている.今後の地方自治法の改正審議は,要観察.