地方自治法改正(今年4月)で政令市に導入が可能になった「総合区」制度について、毎日新聞が全国20政令市にアンケート調査したところ、導入を検討しているのは新潟、名古屋、大阪3市にとどまることが分かった。大半は「メリットがない」などとして導入予定がなかった。道府県政令市が二重行政解消などを協議する「調整会議」では、会合を開催したのは大阪、名古屋2市で、大半は開催のめども立っていない。総合区、調整会議とも住民自治の強化や行政の合理化を図る目的で新設されたが、政令市のニーズに合っていない実態が浮かんだ。
 総合区導入を検討している3市で、新潟は「住民自治の強化につながる可能性がある」と評価。「有用な大都市制度」として位置付ける大阪は区割りなど具体案づくりに着手しているが、新潟は「議会や市民と丁寧に検討を進める」、名古屋は「導入の可否を検討している段階」と温度差がある。
 導入予定がない17市で最も多かった理由は、「区の権限強化は現行制度で対応できる」。区によって住民サービスに差が出る可能性を懸念する声や、人口規模や区数に合わないとする意見もあった。
 調整会議の未開催18市のうち14市は「協議するべき課題がない」と答えた。道府県と協議する場が以前からあり、二重行政を解決してきた経緯があったためとみられる。会議自体は「法定の会議で協議結果の意義・位置付けがより一層強化される」(横浜)と評価する一方、「課題解決には県市の粘り強い努力で協力関係を築くことが重要。制度の変更によって解決できるものではない」(千葉)と否定的な意見もあった。
 首相の諮問機関「地方制度調査会」の答申(2013年)は調整会議への議会の参画が重要と指摘したが、会議メンバーに常に市議が入るのは名古屋、神戸、仙台3市だった。
 総合区は政令市の行政区を格上げして権限を強化する制度で、区長が福祉やまちづくりなどの権限を持ち、人事や予算にも関与する。調整会議は道府県政令市の間で設置が義務付けられた。首長で構成し、必要と認めた場合は両議会の代表者も加える。
 大阪市では市を解体して特別区を設ける「大阪都構想」が住民投票(昨年5月17日)で否決されたが、総合区と修正した都構想とで賛否を問う再度の住民投票を18年度中に実施する構えだ。【牧野宏美、青木純】
総合区導入についての自治体の意見
【導入する】
・住民自治の強化につながる可能性(新潟)
・大阪にふさわしい大都市制度の一つ(大阪)
【導入しない】
・現行制度で区役所の機能強化に取り組み、きめ細かな住民サービスが提供できている(仙台、さいたま、京都、広島、福岡など)
・区ごとにサービス水準に差が出る可能性がある(札幌、北九州)
・人口や行政区数が多くないため、導入のメリットはない(千葉、岡山)
・現行の政令市制度自体が不十分。そこで総合区を導入しても効果はない(横浜)

本記事では,政令指定都市における「総合区」及び「調整会議」導入に関する調査結果を紹介.
2014年8月5日付の本備忘録では,共同通信社による同種調査の結果を記録.2014年8月現在では「検討中」は,本記事と同様に「3市」ではあったものの,同記事では「名古屋,大阪」の当時の回答は「その他」であったなか,本記事によると,2016年4月現在では総合区を「導入を検討している」政令指定都市は,「新潟,名古屋,大阪」の「3市」となっていることが分かる.
また,調整会議に関しては,本記事によると「調整会議の未開催」は「18市」であり,そのうち「14市」からは「協議するべき課題がない」と回答された模様.「指定都市と包括都道府県のトップ会議と位置付けられる」*1同会議.非設置の市・道府県間の調整状況は,要確認.

*1:松本英昭『新版 逐条地方自治法第8次改訂版』(学陽書房,2015年)1396頁

新版 逐条地方自治法

新版 逐条地方自治法