熊本・大分地震で甚大な被害を受けた熊本県阿蘇村で、大分県と県内市町村から派遣された職員らが行政運営を支援している。4月16日の本震以降、避難所の運営や被災家屋の調査など現場対応の主力を担う。今後は住民の生活再建と本格的な復興に軸足が移るが、同村では土木・福祉分野を中心に専門職不足が課題で、息の長い人的支援が必要となりそうだ。
 九州・山口9県は熊本県内の被災地ごとに支援県を割り当てる「カウンターパート方式」を導入。大分県は当初から南阿蘇村を担当する。職員の1回の派遣期間は主に3〜5日間で、順次交代しており、派遣人数は23日現在で延べ1481人。
 現地での活動は▽避難所の運営▽支援物資の管理・運搬▽被災家屋の被害調査▽罹災(りさい)証明書の発行事務、生活再建に関する相談業務―など幅広く、全国知事会から派遣された職員らと連携して支援を続けてきた。
 村役場久木野庁舎内の災害対策本部で人員調整などに当たる藤川将護さん(48)=県職員=は「村の職員も多くが被災し、本来業務も抱えている。村民が南阿蘇の再建に踏み出すため、応援部隊としてしっかり取り組む」と力を込めた。23日まで南阿蘇中学校の避難所で活動した勝尾裕美さん(52)=同=は「衛生管理に細心の注意を払った。隣県の大分が南阿蘇を支えたい」。村内の拠点施設で支援物資の管理・運搬に当たる因雄一郎さん(33)=宇佐市職員=は「被災地での経験を地元の防災に生かしたい」と話した。村災害ボランティアセンターでは大分県内の社会福祉協議会も支援する。県社協の衛藤真紀子さん(34)は「住民ニーズを把握し、復旧に取り組む地元の方をサポートしたい」。
 本震後に3千人を超えた避難者は徐々に減り、罹災証明書の発行手続きも本格化するなど、現地では災害時の応急対策から本格復旧・復興に移行しつつある。同村によると、土砂災害や道路・ライフラインの損壊も相次ぎ、今後の復興事業では土木・建築技術職の不足が見込まれる。高齢者や子どもの心のケアに当たる福祉の専門職も必要という。浅尾鎮也総務課長(58)は「きめ細かく支援をいただき、ただただ感謝しかない。村の復興に歩を進める上で、今後もできる限り応援してもらえるとありがたい」としている。

本記事では,大分県における職員派遣の取組を紹介.
2011年9月に改訂された「九州・山口9県災害時相互応援協定」に基づき「支援自治体ごとにに支援担当県を割り振る」「カウンター方式」*1による同県から熊本県内市町への職員派遣の取組.「平成28年5月23日 9:00現在 」の「熊本県内への職員派遣の状況」によると,宇土市には長崎県沖縄県宇城市には鹿児島県,阿蘇市には長崎県と宮崎県,西原村佐賀県,本記事で紹介されている南阿蘇村は大分県,御船町は山口県嘉島町福島県益城町は福岡県,菊池市長崎県菊陽町は福岡県,甲佐町は鹿児島県,山都町は宮崎県と,各県とともに各県に位置する市町村からも同一支援自治体に派遣されている*2.「広域災害に備えて」*3の同方式による職員派遣の取組.今後の各県・各市町村からの支援状況も,要観察.

*1:九州地方知事会HP「平成28年熊本地震に係る九州地方知事会による熊本県及び熊本県内市町村への支援について(第1報)

*2:九州地方知事会HP「平成28年熊本地震に係る九州地方知事会による 熊本県及び熊本県内市町村への人的支援について」(平成28年5月23日)

*3:稲継裕昭「広域災害時における遠隔自治体からの人的支援」小原隆治・稲継裕昭『震災後の自治体ガバナンス』(東洋経済新報社,2015年),187頁.

大震災に学ぶ社会科学 第2巻 震災後の自治体ガバナンス

大震災に学ぶ社会科学 第2巻 震災後の自治体ガバナンス