街の活性化などを進める資料にするため、多摩市は市内全戸を対象に実施した空き家調査の結果を公表した。全七万四千百十戸のうち、空き家は三千九百四十六戸で空き家率は5・3%、多摩ニュータウン(NT)地域に限ると6・0%だった。全戸対象の調査は全国的にも珍しく、市は地域ごとの住宅政策を立案する材料などとして活用していく。 (栗原淳)
 二〇一三年の総務省による住宅・土地統計調査では、同市の集合住宅の空き家率は11・2%。調査方法が異なるため単純な比較はできないが、市の多摩NTの調査結果と5ポイント余の差が出た。市は「今回の結果がより実態を反映しているのではないか。地域別の空き家率も分かったので、きめ細かい施策につながる」とみている。
 調査は民間企業に委託し、昨年七月〜今年三月に行った。住宅情報サイトで物件の住人の有無を判断したほか、現地調査で電気メーターが動いているか、郵便受けがふさがれていないかを確認し、一戸ずつ空き家を数えた。併せて空き家の所有者に年齢区分や空き家にした理由などを尋ねるアンケートも実施した。
 市全体で一戸建て住宅の空き家率が1・2%にとどまったのに比べ、分譲マンションや公的賃貸住宅などの集合住宅は6・4%と高かった。
 阿部裕行市長は、多摩NTの一部の団地で20%前後の空き家率があったとしながらも「NTは高齢化の問題はあるが、空き家率は全体としては悪くないことが分かった」と話した。

本記事では,多摩市における「空き家」調査の結果を紹介.
同市では,2016年「7月下旬」から2017年「3月上旬」の間に,「市内全域の建築物のうち」「戸建て,集合住宅(持家)」,「集合住宅(賃貸)」,「集合住宅(公的賃貸)」の「全ての住宅を調査」*1を実施.調査方法は,各対象の種別により「机上調査」「現地調査」「アンケート調査」を行い,特に「詳細現地調査」*2は全ての種別に対して実施している.「現地調査」は「建築物」,「敷地」の現況に「主眼点」を定め,「原則,道路からの外観黙視」を「平日の午前9時から午後5時までの時間帯」*3で実施.調査の結果では,「そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態」,「そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態」,「適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態」,「その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態」*4の4分類に判定をしている.
同調査の結果は,本記事でも紹介されている通り,「多摩市全体合計」では「住宅数」が「74,110」あり,「空家等数」は「23,946」,「空家率」は「5.3%」となり,「うち戸建て住宅」は「15,438」あり,「空家等数」は「190」,「空家率」は「1.2%」,「うち集合住宅」は「58,672」中「空家等数」は「3,756」が「空家率」が「6.4%」*5となる.また,「地区別の空家等数及び空家率」では「既存地域」では「10.8%」から「1.0%」まで,ニュータウン地域では「10.7%」から「3.0%」までと各地域内の地区毎での「空家」*6の状況も公表されている.同調査では「空家等の規模としては少ない結果」との認識を示しつつ,今後は,「空家等 が増加していくことを念頭に,発生予防,適切な管理,利活用の促進などのため,引き続き動向を注視していく必要」*7との方向性が示されている.
「本質的には「目に見えにくい」」*8ともされる「空き家」の全体像.同調査を踏まえた,発生予防等の取組は要観察.

*1:多摩市HP(暮らし生活情報住宅多摩市全域で空き家の調査を実施しました)「多摩市空家等実態調査 報告書【概要版】」(平成29年3月 多摩市)2頁

*2:前傾注1・多摩市(多摩市空家等実態調査 報告書【概要版】)2頁

*3:前傾注1・多摩市(多摩市空家等実態調査 報告書【概要版】)3頁

*4:前傾注1・多摩市(多摩市空家等実態調査 報告書【概要版】)2頁

*5:前傾注1・多摩市(多摩市空家等実態調査 報告書【概要版】)5頁

*6:前傾注1・多摩市(多摩市空家等実態調査 報告書【概要版】)6頁

*7:前傾注1・多摩市(多摩市空家等実態調査 報告書【概要版】)11頁

*8:饗庭伸『都市をたたむ 人口減少時代をデザインする都市計画』(花伝社,2015年)101頁

都市をたたむ  人口減少時代をデザインする都市計画

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