県内市町村で本年度、庁舎新築の動きが活発化している。従来、庁舎新築は各自治体の自己財源で対応してきたが、昨年4月の熊本地震を契機に国が本年度、「市町村役場機能緊急保全事業」を新設。県内9市町村が活用の考えを示している。
 庁舎新築に対する国の財政措置はまれで、総務省も「全国から反響がある」。県内で過去に、庁舎建設を巡る議論が白熱した自治体もあったが、自己負担軽減や防災強化が必要との視点から、庁舎建設に対する住民理解も得られやすい環境と言えそうだ。
 熊本地震では、市役所本庁舎が倒壊寸前となった宇土市など熊本県内5市町で庁舎が損壊。行政機能が混乱した。宇土市の庁舎は1965(昭和40)年の建設。4月16日の本震で4階部分がつぶれ、一般被災者への対応に支障が生じた。
 総務省地方債課によると、市区町村の庁舎は本来、どのような建物にするかを自己判断するため「これまで特別な財源措置はなかった」。災害対策本部が設置される全国市区町村の庁舎の27%程度が未耐震とのデータもあるという。県が昨年11月に初めて公表した大規模建築物の耐震診断結果では、12市町村の庁舎が震度6強から7に達する程度の大規模地震で「倒壊・崩壊の危険性が高い」「危険性がある」とされた。
 庁舎の耐震化では、東日本大震災を受けた「緊急防災・減災事業債」(返済額の70%で交付税措置)があるが、防災拠点整備や庁舎耐震化などが目的。総務省地方債課は、熊本地震の被害状況を踏まえ、庁舎建て替えを対象にした今回の事業を新設したと説明。緊急防災・減災事業債の期限と合わせ、2020年度までの4年間とする時限措置を講じている。
 今回の事業は、1981(昭和56)年の新耐震基準導入前に建設され、未耐震の本庁舎建て替えが対象。事業費の22.5%が交付税措置される。県市町村課の話では、庁舎建設の動きがあるのは米沢、長井、尾花沢、河北、真室川、大蔵、川西、白鷹、庄内、遊佐の10市町村。合併特例債を活用する庄内町を除く、9市町村が今回の事業で整備する方針という。同課は「複合施設を検討しているところも多く、どの部分が事業対象になるのかなどを市町村にアドバイスしている」と話す。
 一般に、庁舎建設には基本設計から実施設計、本体工事まで4年程度の期間が必要とされる。今回の事業期間も同じく4年間。総務省地方債課は「20年度までに事業完了しなくてもいいが、支援措置は4年間」としており、こうした事情も庁舎建設の活発化の要因となっているようだ。

本記事では,山形県に位置する市町村における庁舎再建の検討状況を紹介.
本記事によると,各市町村の検討に際して,総務省が2017年度から整備した,1981年の「新耐震基準導入前に建設され」「耐震化が未実施の市町村の本庁舎」を対象とする「市町村役場機能緊急保全事業」*1をもとに検討されている模様.同事業は,「地方債」の「充当率」が「90%」,「交付税措置対象分75%」となり,「事業要件」としては,「公共施設等総合管理計画に基づいて実施される事業であること」そして,「個別施設計画に基づく事業」であり「建替え後の庁舎を業務継続計画に位置づけるものであること」*2とされている.同事業は2020年度までの「4年間」*3となる.同「財政措置」*4を契機とした建替状況は,要観察.

*1:総務省HP(政策地方行財政地方財政制度)「平成29 年度地方財政計画の概要」(総務省自治財政局,平成29年2月)8頁

*2:前傾注1・総務省(平成29 年度地方財政計画の概要)8頁

*3:前傾注1・総務省(平成29 年度地方財政計画の概要)8頁

*4:松井望「公共施設の複合化とその管理」公益財団法人日本都市センター『超高齢・人口減少時代に立ち向かう』(公益財団法人日本都市センター,2017年)134頁

超高齢・人口減少時代に立ち向かう-新たな公共私の連携と原動力としての自治体-(地域経済財政システム研究会WG報告書)

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  • 作者: 井手英策,沼尾波子,村山卓,松井望,佐藤宏亮,宮崎雅人,関口智,清水浩和,公益財団法人日本都市センター
  • 出版社/メーカー: 公益財団法人日本都市センター
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