地方自治体が低所得者らに割安な家賃で提供する公営住宅で、入居世帯の約1割が家賃を1カ月以上滞納しているとみられることが23日、総務省などの調査で分かった。自治体が滞納の理由を把握していない、住宅や福祉など担当部局間の連携が不十分といったケースが判明したため、滞納を長期化させぬよう同省は所管する国土交通、厚生労働両省に改善を勧告した。
 調査によると、2015年度末時点で家賃を1カ月以上滞納しているのは約21万世帯。62自治体を対象としたサンプル調査に基づくと、公営住宅の全入居世帯に占める割合は1割程度と推測できるという。

本記事では、総務省における行政管理局調査の結果を紹介。
紹介されている調査は、2018年1月23日に「勧告」がされた『公的住宅の供給等に関する行政評価・監視』*1。同調査は、「16都道府県」「53 市区」*2を対象に実施。本記事では、調査事項のうち「公営住宅の家賃滞納者の現状」*3となる。同調査結果によると、69の調査対象自治体のうち、2016年「11月末現在の家賃の納付状況」が「把握できた」、62自治体の「入居世帯数は85万4,639世帯」、そして「同年10月分の家賃から」遡り、「1か月以上家賃を滞納しているものは 9万6,132世帯」と「11.2%」、「家賃滞納額」は「74億5,085万円」*4となる。くわえて、自治体別の「入居者に占める家賃滞納者の割合」によると、「5%未満」が5自治体、「30%を超」えた自治体が 「4」*5となる。
対策としては、「住宅部局」と「生活保護担当部局等の福祉部局と連携した支援」が想定されるが、69自治体のうち「家賃滞納者に対して住宅部局と生活保護担当部局」又は「自立相談支援機関と連携した支援を行うことについて明文化した仕組みがある」のは「2」*6自治体となる。以上の現状を踏まえて、同省からは、国道交通省と厚生労働省に対する「所見」のひとつとして、「福祉的な支援を必要とする者に対する住宅部局と福祉部局が連携した支援の具体的な例を都道府県等に示すこと等」による「両部局間の連携の促進を図ること」*7が示されている。これによる両部局間、両制度間での「一体的な運用」*8の取組状況は、要観察。

*1:総務省HP(政策国の行政制度・運営行政評価行政評価局調査平成29年度に勧告等を行った行政評価局調査)『公的住宅の供給等に関する行政評価・監視

*2:前掲注1・総務省(公的住宅の供給等に関する行政評価・監視)1頁

*3:前掲注1・総務省(公的住宅の供給等に関する行政評価・監視)48頁

*4:前掲注1・総務省(公的住宅の供給等に関する行政評価・監視)48頁

*5:前掲注1・総務省(公的住宅の供給等に関する行政評価・監視)48頁

*6:前掲注1・総務省(公的住宅の供給等に関する行政評価・監視)49頁

*7:前掲注1・総務省(公的住宅の供給等に関する行政評価・監視)51頁

*8:山崎史郎『人口減少と社会保障』(中央公論新社、2017年)229頁