東京都が制定を目指している罰則付きの受動喫煙防止条例案について、予定していた2月開会の都議会定例会への提出をいったん見送る方針を固めたことが30日、関係者への取材で分かった。厚生労働省が検討している健康増進法改正案と、規制対象となる施設の区分などで食い違いが出る恐れがあり、整合性を精査する必要があると判断した。
 都は昨年9月、条例案の基本的な考え方を公表。多数の人が利用する施設の屋内を原則禁煙とし、面積30平方メートル以下のバーやスナックなどについては例外的に、全従業員の同意などの条件を満たした場合、喫煙を容認することなどを柱としている。

 厚生労働省は30日、ファミリーレストランなどの大手チェーン店や新規開業の飲食店は原則禁煙とすることを盛り込んだ新たな受動喫煙防止のための対策案を発表した。吸う人が急増している加熱式たばこも規制の対象とする。
 経営規模の小さな既存店で、一定の面積以下の場合、例外的に喫煙を認める。具体的な面積は明示しなかったが、150平方メートル以下を軸に自民党と最終調整している。合意すれば3月に健康増進法の改正案を国会に提出する。当初案の30平方メートル以下から大幅に後退、例外が拡大することに医療関係者や患者団体から反発が予想される。

両記事では、東京都および政府における受動喫煙防止規制の取組方針を紹介。
第2記事で紹介された通り、厚生労働省では健康増進法の改正にむけて、「受動喫煙が他人に与える健康影響」と「喫煙者が一定程度いる現状を踏まえ」つつ、「屋内において、受動喫煙にさらされることを望まない者がそのような状況に置かれることのないようにすることを基本」とする「「望まない受動喫煙」対策の基本的考え方」*1を公表。
同考え方によると、「子どもなど20歳未満の者、患者等」を「特に配慮」し、「施設の類型・場所ごとに対策を実施」*2することが示されている。改正の「骨格」としては、「医療施設、小中高、大学等や行政機関は、敷地内禁煙」、同施設以外の施設となる「事務所、飲食店、ホテル、老人福祉施設、運動施設等」は「屋内原則禁煙」とし「室外への煙の流出防止措置を講じており、専ら喫煙を行う」「喫煙専用室」「内でのみ喫煙を可能とする」こと、なお、「住宅、旅館・ホテルの客室等の私的な空間は、適用除外」*3とされる。「加熱式たばこ」は「その煙にニコチン等の有害物質が含まれていることは明らかである」としつつも、「現時点の科学的知見では、受動喫煙による健康影響は明らかでない」として、「当分の間、 喫煙専用室」又は「喫煙専用室と同様に、室外への煙の流出防止措置を講じた」「加熱式たばこ専用の喫煙室」「内でのみ喫煙を可能とする」*4こととされている。
さらに「既存の飲食店のうち経営規模が小さい事業者が運営するもの」に関しては、「法律の施行時点における既存の飲食店のうち、中小企業や個人が運営する店舗であ」り「面積が一定規模以下のもの」は「別に法律で定める日までの間」「「喫煙」「分煙」の標識の掲示により喫煙を可能とする」*5。「施行期日」は、「施設の類型・場所に応じ」「施行に必要な準備期間を考慮」し「2020年東京オリンピックパラリンピックまでに段階的に施行」*6ことが示されている。
2017年9月11日付同年11月28日付同年12月8日付の各本備忘録では同都による同条例案策定にむけた検討方針を記録。第1記事によると、上記の政府による「健康増進法改正案」と「規制対象となる施設の区分などで食い違いが出る恐れがあり」「整合性を精査する必要があると判断」し、「予定していた2月開会の都議会定例会への提出をいったん見送る方針」が検討された模様。同精査の結果、同都の対応方針が「国法指向」*7となるか、要経過観察。

*1:厚生労働省HP(政策について分野別の政策一覧健康・医療健康受動喫煙対策)「「望まない受動喫煙」対策の基本的考え方」1頁

*2:前掲注1・厚生労働省(「望まない受動喫煙」対策の基本的考え方)1頁

*3:前掲注1・厚生労働省(「望まない受動喫煙」対策の基本的考え方)2頁

*4:前掲注1・厚生労働省(「望まない受動喫煙」対策の基本的考え方)2頁

*5:前掲注1・厚生労働省(「望まない受動喫煙」対策の基本的考え方)2頁

*6:前掲注1・厚生労働省(「望まない受動喫煙」対策の基本的考え方)2頁

*7:松井望「課題設定と自治政策法務」北村喜宣・山口道昭・礒崎初仁・出石稔・田中孝男編『自治政策法務の理論と課題別実践 鈴木庸夫先生古稀記念』(第一法規、2017年)、288頁

自治体政策法務の理論と課題別実践-鈴木庸夫先生古稀記念

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